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[ACG39-05] VISIT モデルによるカラマツ林における生態系レベルのモノテルペン放出のモデル化
キーワード:プロセスベースのモデリング、モノテルペン放出、植物生理学、VISITモデル
地球規模の大気環境に影響を及ぼす揮発性有機化合物(VOC)のうち、生物起源の揮発性有機化合物(BVOC)は、主に陸上環境における植生活動を起源とする主要な発生源となっている。モノテルペンは、主にカラマツ林で蓄積される典型的なBVOCとして、二次有機エアロゾル(SOA)の生成過程に影響を与え、特に気温に敏感な地域の気候を変動させる可能性がある。ところが、これまでのモデリング研究では、モノテルペンの排出を日単位で長期的にシミュレーションすることはほとんどなかった。そこで、富士山のカラマツ林の30分毎のモノテルペン放出データに基づいて、VISITモデルのプロセスベースのモジュールを新規に開発した。本モジュールの構築にあたっては、生態系レベルでのモノテルペンの生産、蓄積、排出を3つの主要なプロセスとして考えている。ストレスについては、温度と光を除き、CO2濃度と土壌水分量もモノテルペン生成プロセスに影響を与える要因として考慮した。さらに、本研究ではモデルキャリブレーションの主要ステップとして、この生態系におけるモノテルペンの滞留時間(rt)と滞留割合(rf)の最適なパラメータ群を探索した。その結果、rtが160日、rfが0.7のとき、二乗平均平方根誤差(RMSE)が観測データで最も小さい値を示すことがわかった。それに、年間の観測平均値0.62nmol/m2/sと比べて、VISITモデルの年間平均値(0.64nmol/m2/s)は、温度依存性モデルG93によるシミュレーション値(0.52nmol/m2/s)より優れたことを示す。また、VISITモデルはG93モデルによるシミュレーションよりも、温度と光の日変化に対してより効果的に反応することがわかった。私たちは、このモデリングが、シベリアのカラマツやその他の典型的な植生を持つ地域のモノテルペン排出量を推定するための良い例となると考えている。しかし、地球規模でのシミュレーションを行う場合、異なる植物機能型(PFT)に対するモデルのキャリブレーションのために、より多くの検証データが必要である。