日本地球惑星科学連合2023年大会

講演情報

[J] オンラインポスター発表

セッション記号 A (大気水圏科学) » A-CG 大気海洋・環境科学複合領域・一般

[A-CG39] 陸域生態系の物質循環

2023年5月26日(金) 10:45 〜 12:15 オンラインポスターZoom会場 (7) (オンラインポスター)

コンビーナ:加藤 知道(北海道大学農学研究院)、寺本 宗正(鳥取大学乾燥地研究センター)、伊勢 武史(京都大学フィールド科学教育研究センター)、市井 和仁(千葉大学)


現地ポスター発表開催日時 (2023/5/25 17:15-18:45)

10:45 〜 12:15

[ACG39-P03] 東シベリアにおけるサーモカルストによる沈降地形出現に影響を与える環境要因

*藏田 典子1高屋 浩介2伊勢 武史2飯島 慈裕3 (1.山口県立大学、2.京都大学、3.三重大学)

キーワード:サーモカルスト、ディープラーニング、衛星画像、地形条件

東シベリアの連続的永久凍土地帯では、地球温暖化の影響によって永久凍土融解に伴う地表面の変化が進み、サーモカルストによる地形沈降が急速に広がりつつあることに警鐘が鳴らされている。このような環境変化の要因としては、気候変動に加えて、人口の増加とともに拡大する住宅地や、林業や鉱業に関する土地開発が関係していることも指摘されている。このように、気候変動というグローバルな環境変化と、人口増加や土地開発などの地域的な人為影響、さらにはローカルな地形や微気象などが、サーモカルストの出現に複合的な影響を与えていると考えられる。そこで本研究では、人工知能モデルによって検出されたサーモカルスト発達域の位置情報に、地形などの環境条件を重ねることで、どのような条件がサーモカルストによる沈降地形(ポリゴン)の出現に影響を与えているのかを検討する。ポリゴン地形の検出は、人工衛星画像に「こま切れ画像法」と呼ばれるディープラーニング手法を適用することで実施した。環境条件としては、傾斜(日向斜面なのか、日陰斜面なのか)や地形の起伏などのデータを用いた。本研究の新規性は、人工衛星画像に対しディープラーニングを用いた比較的広域におけるポリゴン地形の自動識別を行い、その発生を環境条件と比較検討することにある。人工衛星画像とディープラーニングの組み合わせによって、広い範囲を一定の手法でスキャニングすることが可能になり、目視による判別で懸念される個人差などの精度のゆらぎを低減することが期待される。また、サーモカルストが発達しやすい環境条件を明らかにすることで、気候変動の影響を特に受けやすい地域を予測することができるかもしれない。東シベリアの地域住民に対する調査では、環境変化に対する認識が地域住民グループごとに大きな差があることが明らかになっている。気候変動・ローカルな環境条件・人為的影響といった複合要因を定量化することで、将来的には、地域住民の環境変化への啓発活動に発展させるなど総合的な環境対策に応用されることが望まれる。
本研究は、文部科学省北極域研究加速プロジェクト(ArCS II: Arctic Challenge for Sustainability II)の助成 (JPMXD1420318865)を受けたものである。