09:30 〜 09:45
[ACG40-03] 放射性同位体を用いた東京湾内湾部での海底地下水湧出特性の解析
キーワード:海底地下水湧水、東京湾、放射性同位体、滞留時間
【背景】
陸域起源物質を運搬する媒体として海底地下水湧出(Submarine Groundwater Discharge:以下SGDと表記)の重要性が示唆されている。SGDは陸域から続く帯水層から海域へと湧出する淡水成分(Fresh Submarine Groundwater Discharge:FSGD)と、潮汐流等によって海底堆積物中に入り込んだ海水が再び海域に湧出する塩水成分(Recirculated Submarine Groundwater Discharge:RSGD)の総称である。SGDは海底に湧出することで視覚的に捉えることができずに時空間変動が大きいと考えられるので、その海域への寄与を評価することが困難であるとされてきた。東京湾の物質循環研究においても、地下水の淡水流入への寄与は明らかにされていない。本研究では、海水中より地下水(淡水,塩水関係なく)中に10-1000倍のオーダーで含有される222Rn(t1/2=3.84日)と、RSGDに多く含まれるRa同位体核種(223Ra;t1/2=11.4日,224Ra;t1/2=3.66日、226Ra;t1/2=1600年)を用いて、東京湾内湾部におけるSGDの空間分布や、地点に応じた滞留時間を評価することを本研究の目的とした。
【材料と方法】
2021年12月から2022年11月にかけて6回(2021年12月,2022年2月,5月,8月,9月,11月)、4地点(多摩川河口沖:F3,江戸川河口沖:CB,荒川河口沖:AR,青梅コンテナふ頭前:AOにおいて、海水採水調査を行って、RnやRaの計測を行った。また、2022年11月に、三浦半島から富津岬にかけての沿岸域では、Rnの分析を行った。
【結果&考察】
各調査地点での表層海水中222Rn濃度と塩分をプロットし、近似直線のy切片の値を、近傍の河川水と地下水の代表的な222Rn値と比較したところ、多摩川河口沖では、河川の影響が優占していることが示された。また、荒川河口沖では、河川水とFSGDの影響が、江戸川河口沖の底層でも、FSGDの存在が推測された。また、沖合海水と、それぞれの海域の河川水の単純混合によって塩分とRa同位体濃度が決定されるとした場合、多摩川河口沖では過剰なRaは存在せず、RSGDの存在はみられなかった。一方で、江戸川河口沖や荒川河口沖では、過剰なRaを観測しており、RSGDの存在を示唆していた。当日は、224Ra/223Ra、および226Raから推測される海水滞留時間の違いも含めて、淡水流出特性の違いの地域差が、東京湾奥部の海洋生態系に与える影響について議論していく。
陸域起源物質を運搬する媒体として海底地下水湧出(Submarine Groundwater Discharge:以下SGDと表記)の重要性が示唆されている。SGDは陸域から続く帯水層から海域へと湧出する淡水成分(Fresh Submarine Groundwater Discharge:FSGD)と、潮汐流等によって海底堆積物中に入り込んだ海水が再び海域に湧出する塩水成分(Recirculated Submarine Groundwater Discharge:RSGD)の総称である。SGDは海底に湧出することで視覚的に捉えることができずに時空間変動が大きいと考えられるので、その海域への寄与を評価することが困難であるとされてきた。東京湾の物質循環研究においても、地下水の淡水流入への寄与は明らかにされていない。本研究では、海水中より地下水(淡水,塩水関係なく)中に10-1000倍のオーダーで含有される222Rn(t1/2=3.84日)と、RSGDに多く含まれるRa同位体核種(223Ra;t1/2=11.4日,224Ra;t1/2=3.66日、226Ra;t1/2=1600年)を用いて、東京湾内湾部におけるSGDの空間分布や、地点に応じた滞留時間を評価することを本研究の目的とした。
【材料と方法】
2021年12月から2022年11月にかけて6回(2021年12月,2022年2月,5月,8月,9月,11月)、4地点(多摩川河口沖:F3,江戸川河口沖:CB,荒川河口沖:AR,青梅コンテナふ頭前:AOにおいて、海水採水調査を行って、RnやRaの計測を行った。また、2022年11月に、三浦半島から富津岬にかけての沿岸域では、Rnの分析を行った。
【結果&考察】
各調査地点での表層海水中222Rn濃度と塩分をプロットし、近似直線のy切片の値を、近傍の河川水と地下水の代表的な222Rn値と比較したところ、多摩川河口沖では、河川の影響が優占していることが示された。また、荒川河口沖では、河川水とFSGDの影響が、江戸川河口沖の底層でも、FSGDの存在が推測された。また、沖合海水と、それぞれの海域の河川水の単純混合によって塩分とRa同位体濃度が決定されるとした場合、多摩川河口沖では過剰なRaは存在せず、RSGDの存在はみられなかった。一方で、江戸川河口沖や荒川河口沖では、過剰なRaを観測しており、RSGDの存在を示唆していた。当日は、224Ra/223Ra、および226Raから推測される海水滞留時間の違いも含めて、淡水流出特性の違いの地域差が、東京湾奥部の海洋生態系に与える影響について議論していく。