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[ACG40-P01] 伊勢湾表層水におけるラジウム分布の特徴:陸域影響評価ツールとしての検討
キーワード:伊勢湾、ラジウム同位体、ラジウムエイジ
伊勢湾は日本の三大湾の一つであり、陸域からの河川流入量が大きいのが特徴である。しかしながら、流域および沿岸部地下水からの流入に関しする知見はない。陸域からの水・物質の流入評価をする際に、ラジウム同位体(223Ra,224Ra,226Ra,228Ra)が有効な溶存トレーサー物質として知られている。海水中に放出されたラジウム同位体は、生物・化学的作用の影響を受けず、保存的な挙動を示す。またその活性はそれぞれのラジウム同位体の半減期に依存して減少するが、それらの比を利用することでラジウムエイジ(≒水塊年齢)の算出が可能である。本研究では伊勢湾における陸域影響評価において、ラジウム同位体が有効であるのかを調べるために、2022年10月~12月にかけて、表層海水・河川水・砂浜地下水を採取し、その有用性を検討した。224Ra(半減期3.66日)は河川水(木曽川・揖斐川・長良川)では平均5.29dpm/100Lであったが、河口域で平均43.76 dpm/100Lまで上昇した。その後、河口から湾口に向かって活性は低下していった。同様の傾向は、223Ra(半減期11.4日)でも認められた。そこで、塩分と224Raの関係を見ると、湾口水と河川水が保存的に混合したと考えられる理論的混合直線よりも上側に、河口や複数の表層海水の224Raがプロットされ、非常に高い224Raを含有する地下水(※塩分を含む)の混入によって説明可能であった。そこで、ベイズ推定混合モデルから、表層海水への河川水および地下水の寄与率を推定したところ、平均で河川水は18.4%、地下水は12.0%であった。地下水は、陸域全体(河川水+地下水)の4割に相当し、伊勢湾にも無視できない地下水の影響が生じていることが確認された。さらに、224Ra/223Raから水塊年齢の算出を行ったところ、河口域で0.5日、湾口で6日程度であった。また栄養塩濃度と水塊年齢の関係を見ると、栄養塩濃度は水塊年齢が2日を超えるとケイ素を除きほぼ枯渇し、クロロフィルとの関係から植物プランクトンによって消費されているものと考えられた。