日本地球惑星科学連合2023年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 A (大気水圏科学) » A-CG 大気海洋・環境科学複合領域・一般

[A-CG42] 陸域から沿岸域における水・土砂動態

2023年5月23日(火) 09:00 〜 10:15 102 (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:有働 恵子(東北大学大学院工学研究科)、浅野 友子(東京大学)、木田 新一郎(九州大学・応用力学研究所)、山崎 大(東京大学生産技術研究所)、座長:有働 恵子(東北大学大学院工学研究科)、木田 新一郎(九州大学・応用力学研究所)

09:30 〜 09:45

[ACG42-03] 千葉県小松海岸の海岸植生を用いた段波に対する土砂捕捉効果に関する水理実験

*山本 阿子1 (1.防衛大学校)

キーワード:植生被覆、水理実験、土砂移動

海岸植生は,砂丘面において海からの強風により発生する飛砂の捕捉や,飛砂そのものの発生を抑制する効果を有するとされている.近年,巨大化す台風による高潮やゲリラ豪雨により,植生が繁茂するエリアへの波の侵入や局所的に砂丘面を流下する流れによる浸食が土砂流出を加速させることが懸念されている.局所的な洗堀は,海岸林の林床を不安定にすることから,林床および周辺の管理道の維持管理においても,植生の土砂捕捉効果は重要な知見である.しかし,これらの事象に対し,植生がどの程度土砂を捕捉する効果は定量化されてない.そこで本研究は,波や流れに対する植生の土砂捕捉効果を調べるため,千葉県山武市小松海岸の海岸林前縁部の砂丘帯に繁茂する植生を用いた土砂移動水理実験を実施した.植生のサンプルは,植生を基盤の土砂ごと合計5サンプル採取した.波の条件は,高潮や津波先端を模した段波の波高違いを2種類,津波通過時や豪雨の際に砂丘面を流下する流れを模した定常流を実施した.段波は,複数回発生させるケースも実施した.
その結果,段波では波の規模が小さいケースと被覆度が高いケースで土砂移動量が減少することが確認できた.段波を複数回発生させた場合,概ね波ごとに土砂移動量が減少する傾向がみられた.被覆度だけでなく,露出した根茎部による影響があることが示された.しかし,被覆度が小さいケースにおいて2-3波目で初波よりも土砂移動量が増加するケースが確認できた.これは,被覆度が小さいことから地中の根茎量も少なく洗堀が発達したことが原因と考えられる.この傾向は,千葉県富津海岸など多地点で採取したサンプルでも確認できており,根茎の有無や地中でどの程度分布しているかが,初波以降の土砂流出に大きく影響することが示された.定常流では,植生がない露出部の洗堀が著しく発達することから,被覆度や根茎量による影響よりも植生の配置により流れが発達する流路が形成されるかに影響を受ける可能性が高いことが示唆された.