日本地球惑星科学連合2023年大会

講演情報

[J] オンラインポスター発表

セッション記号 A (大気水圏科学) » A-CG 大気海洋・環境科学複合領域・一般

[A-CG42] 陸域から沿岸域における水・土砂動態

2023年5月24日(水) 10:45 〜 12:15 オンラインポスターZoom会場 (8) (オンラインポスター)

コンビーナ:有働 恵子(東北大学大学院工学研究科)、浅野 友子(東京大学)、木田 新一郎(九州大学・応用力学研究所)、山崎 大(東京大学生産技術研究所)

現地ポスター発表開催日時 (2023/5/23 17:15-18:45)

10:45 〜 12:15

[ACG42-P08] 多峰性粒度分布から分離された粒径成分の特徴に基づく土砂動態の定量的推定:霞ヶ浦の湖底表層堆積物の例

*山口 直文1、大内 孝雄2 (1.茨城大学 地球・地域環境共創機構、2.茨城県霞ケ浦環境科学センター)

キーワード:粒度分布、粒径成分、霞ヶ浦、堆積物輸送経路、土砂フラックス

水底表層の堆積物の粒度分布は,その地域の堆積物輸送経路や堆積過程の影響を反映していることから,それらを推定する手がかりとして知られている.これまでの研究では,粒度分布の中央値や淘汰度,歪度などの統計値を代表パラメータとして用いて推定が行われてきた.しかし,自然界の堆積物の粒度分布は異なる起源を反映した多峰性の複雑な分布形をしばしば示すため,単峰性分布を想定した統計値のみでは堆積物輸送を適切に推定できない場合がある.本研究では,霞ヶ浦の湖底堆積物について,粒度分布を複数の対数正規分布に分離し,各成分の混合割合の解析を元に堆積物の輸送経路や湖内での土砂フラックスについて検討した.霞ヶ浦西浦の湖心を中心とした一辺約4.2 kmの範囲内16地点の湖底表層堆積物について粒度分析を行い,得られた粒度分布を対数正規分布に成分分離した.分離はEMアルゴリズムにより対数正規分布のパラメータ推定を行い,赤池情報量基準の値に基づき成分数を決定した.成分分離の結果,今回の試料の粒度分布は共通した平均粒径を持つ5つまたは6つの対数正規分布成分に分離された.これらの成分を4つの成分群に分類し,その混合割合について対数比解析を行った.細粒な成分群の対数比の値は湖内で違いがあまりない一方,最も粗粒な成分群は岸からの距離に応じて試料によって対数比の値が大きく異なっていた.その空間分布から,細粒な成分群が湖内で比較的一様に堆積している一方で,粗粒な成分群は北東および南西の沿岸域からの供給が卓越していることが示唆された.また,調査地域南西の小野川河口域から粗粒成分が流入している可能性も示唆された.最も細粒な粒度成分群を湖内で不変と仮定することで,最も粗粒な成分群の土砂フラックスの空間的な違いが定量的に推定された.湖心近くを基準とした場合,今回の調査地の沿岸域に近い地点では,粗粒成分群の土砂フラックスが約3–6倍あることが明らかになった.本研究は,複雑な粒度分布について適切な解析を行うことで,特徴的な粒径成分のみを抽出した土砂動態の推定や,本来粒度データのみからは推定が難しい定量的な土砂フラックスなどについても情報が得られる場合があることを示唆している.