09:00 〜 09:15
[ACG43-01] 日本の南の亜熱帯モード水が台風に与える影響
★招待講演
キーワード:亜熱帯モード水、台風、黒潮大蛇行、十年規模変動
亜熱帯モード水(STMW)は各大洋の亜熱帯循環西部の主水温躍層上部に見られる鉛直一様層である。アルゴフロートデータの解析により、厚さが十年規模で変動する日本の南のSTMWが、厚くなるほどSTMW以浅の等温面を持ち上げる効果により、年間を通じて上層の水温構造に影響を与えていることが示された。この持ち上げ効果は特に、季節水温躍層の発達する暖候期に強い。2015年以降、日本の南のSTMWは黒潮大蛇行の発生により100m程度薄くなり、上層の水温を最大1℃程度上昇させた。このことは、十年規模で変動するSTMW厚が日本の南の台風強度に影響を与える可能性を示唆する。実際、過去50年間の観測データは、熱帯低気圧の発達率がSTMWの厚い年に有意に低下し、STMWの薄い年に有意に上昇することを示している。さらに、東日本に甚大な被害を与えた2019年10月の台風Hagibisに関する数値実験により、STMW厚がピーク時の2015年と同程度であった場合、Hagibisの最低中心気圧は最大で6.5 ± 1.2 hPa増加したであろうということが示された。最近、気候変化に伴うSTMWの縮小傾向が示唆されているが、それは将来的な海洋上層の昇温や台風強化を加速させる可能性がある。