日本地球惑星科学連合2023年大会

講演情報

[J] オンラインポスター発表

セッション記号 A (大気水圏科学) » A-CG 大気海洋・環境科学複合領域・一般

[A-CG44] 全球海洋観測システムの現状と将来:自動観測と船舶観測の可換性

2023年5月26日(金) 10:45 〜 12:15 オンラインポスターZoom会場 (9) (オンラインポスター)

コンビーナ:細田 滋毅(国立研究開発法人海洋研究開発機構)、桂 将太(東京大学大気海洋研究所)、藤井 陽介(気象庁気象研究所)、増田 周平(海洋研究開発機構)

現地ポスター発表開催日時 (2023/5/25 17:15-18:45)

10:45 〜 12:15

[ACG44-P09] 新しい熱帯太平洋観測システム(TPOS)を対象とした観測システム実験(OSE)の計画について

*藤井 陽介1,2、高谷 祐平1石川 一郎1 (1.気象庁気象研究所、2.統計数理研究所)

キーワード:熱帯太平洋観測システム、観測システム実験、国連海洋科学の10年

2010年以降、太平洋熱帯観測システムはいくつかの問題に直面した。例えば、2012-2014年には、予算の不足からTAOアレイの多くのブイについて、メンテナンスが行われず観測が停止した。また、TRITONアレイについてもブイが大幅に削減された。このような状況の中、全球海洋観測システム(GOOS)の下部組織として結成されたTPOS2020プロジェクトでは、様々な観測プラットフォームを組み合わせた効率的で持続可能な新しい熱帯太平洋観測システム(TPOS)のデザインについて検討を行い、2019年に公開した[藤井1] 。新たなデザインは、赤道域(2˚S-2˚N)の外側の観測密度を減らす一方、亜熱帯域の大気海洋フラックスの観測のため、いくつかの緯度線にそった観測ラインを延長するほか、海面付近の観測を強化するなど、全体的に大気海洋相互作用の観測に重点をおいたものとなっており、現在、そのデザインへの移行が進められている。
 熱帯太平洋の観測は、ENSOの予測を行うのに必要不可欠であり、一ヶ月から数ヶ月の予報で用いられる大気海洋結合予測システムにとって重要なデータである。これまでもTAO-TRITONアレイやアルゴフロートのENSO予測に対するインパクトが観測システム実験(OSE)によって調べられ、TPOSO2020でも報告されている(Fujii et al. 2015)。現在、TPOSのデザイン移行の大気海洋予測システムに対する影響を明らかにするため、気象庁とヨーロッパ中期予報センター(ECMWF)、米国環境予測センター(NCEP)などが協力し、新たな観測システム実験を共同で実施することを計画している。本計画では多くのシステムを用いることにより、個々のシステムの系統誤差の影響をできるだけ排除した堅牢な評価を行うことを目指している。本計画は、国連海洋科学10年プロジェクトSynObsとも連携しており、SynObsの一部として企画されているより高解像度の海洋予測システムを用いたOSEの結果と合わせて解析し、今後の全球的な海洋観測ネットワークの維持発展に資する情報を提供する予定である。その中で、TPOSにおける観測船や船舶観測の役割についても、検討が進むことが期待される。