日本地球惑星科学連合2023年大会

講演情報

[J] オンラインポスター発表

セッション記号 A (大気水圏科学) » A-CG 大気海洋・環境科学複合領域・一般

[A-CG44] 全球海洋観測システムの現状と将来:自動観測と船舶観測の可換性

2023年5月26日(金) 10:45 〜 12:15 オンラインポスターZoom会場 (9) (オンラインポスター)

コンビーナ:細田 滋毅(国立研究開発法人海洋研究開発機構)、桂 将太(東京大学大気海洋研究所)、藤井 陽介(気象庁気象研究所)、増田 周平(海洋研究開発機構)

現地ポスター発表開催日時 (2023/5/25 17:15-18:45)

10:45 〜 12:15

[ACG44-P10] Argo格子化デーセットMOAA GPVによる近年の海洋貯熱量の海域毎の変動特性

*細田 滋毅1佐藤 佳奈子1須賀 利雄1 (1.国立研究開発法人海洋研究開発機構)

キーワード:海洋貯熱量、Argo観測、季節・経年変動

地球温暖化により地表面に到達、表層に蓄積された熱の主要な浸透場所が海洋内部であり、その熱が既に海洋表層のみならず、中深層に伝導していることが示されている(IPCC, 2021)。Argoをはじめとした近年の充実した観測データにより、海洋貯熱量(OHC)トレンドは、既にエラーバー付きで定量的に高い精度で示されてきている(Schuckmann et al., 2023)。しかし、全球的な海洋内部の昇温メカニズムはまだ完全に明確になったとは言えない。例えば2000年から2010年代前半にかけて温度上昇が停滞した現象(ハイエイタスと呼ばれる)は、赤道域での海面水温上昇の低下との関連が有力視されているものの、その要因は、気候モデルを用いた研究が多々行われている現在でも諸説存在する。
ハイエイタスから再び上昇トレンドに転じた後の海洋内部の観測データも蓄積され、それらの期間におけるOHCの実態把握が可能となってきた。そこで本研究では、20年以上蓄積されたArgoデータに基づく10日毎の格子化データMOAA GPV (ver 2)を作成、ハイエイタスとその後のOHCの時空間変動特性について統計的に記述することを試みた。過去の研究で指摘されている温度の停滞とその後の上昇傾向は、本データセットでも表層から亜表層でのOHCにも現れているが、主に熱帯域や北半球において、世界の平均気温変化と比較的よく連動することが示されていた。一方で、南半球ではその停滞と上昇のタイミングは若干早く、2000年代後半にはOHCの昇温が始まっていることが示された。そしてこの傾向は700m以浅の貯熱量では明確に現れているが、大西洋を除きそれ以深では殆ど変化していない。以上のことは、一連の現象は水温躍層以浅で主に起こっていること、北半球でより大気側の気温変動に同期していることを示している。OHCの季節変動・季節内変動も表層ではOHCトレンドと比べて各海域で同じオーダーかそれより大きい。発表時には、それらも含め貯熱量変動の詳細な空間分布と季節変動性との関係について示す予定である。