09:30 〜 09:45
[ACG45-03] Characteristics of late summer Arctic brash sea ice and its melting effect on the surface water biogeochemistry in the Chukchi Sea
キーワード:海氷、砕け氷、栄養塩、チュクチ海、北極海
晩夏の北極チュクチ海における砕け氷(1 m3以下の小さな海氷)の生物地球化学的特徴および融解時の表層海洋環境に与える影響を明らかにするため、2021年夏季の海洋地球研究船みらいによる航海中に砕け氷をカゴで採取した。融解後、塩分、酸素安定同位体比、濁度、クロロフィルa、栄養塩濃度を測定した。採取した海氷は衛星による後方追跡および低い塩分の結果より、多年氷と推定された。また、海氷生成時の海水(水温極小層)と海氷の塩分と栄養塩濃度を比較した結果、ブラインの排出に伴う栄養塩の減少に加え、一度アイスアルジーによって取り込まれた栄養塩が、有機物分解などによって再生したことが示唆された。また、採取したサンプルの中には融解水の濁度が極端に高い砕け氷が含まれた。そのような海氷サンプルでは、茶色または緑色の堆積物が含まれており、クロロフィルa、リン酸、アンモニア濃度が高くなり、N/P比は1程度と低くなった。これは、植物プランクトンが集積したバイオフィルム内での有機物分解による栄養塩の蓄積、窒素とリンの生物・物理作用の違い(分解速度や吸着性など)が複合的に作用した結果と考えられる。また、本研究で採取した海氷サンプル中の栄養塩濃度をもとに、海氷融解によるチュクチ海の表層水の栄養塩濃度の変化を試算した。その結果、海氷融解により硝酸、アンモニアが供給され、珪酸は希釈されると推定され、海氷の融解が硝酸塩の枯渇した晩夏のチュクチ海の窒素源となりうる可能性が示唆された。