日本地球惑星科学連合2023年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 A (大気水圏科学) » A-CG 大気海洋・環境科学複合領域・一般

[A-CG45] 海洋表層-大気間の生物地球化学

2023年5月21日(日) 10:45 〜 12:00 102 (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:亀山 宗彦(北海道大学)、岩本 洋子(広島大学大学院統合生命科学研究科)、野口 真希(国立研究開発法人海洋研究開発機構 地球表層システム研究センター)、小杉 如央(気象研究所)、座長:亀山 宗彦(北海道大学)、岩本 洋子(広島大学大学院統合生命科学研究科)

11:15 〜 11:30

[ACG45-09] 大気及び河川を介した富栄養化に対する海洋炭素•酸素循環の応答

*山本 彬友1羽島 知洋1山崎 大2野口 真希1伊藤 彰記1河宮 未知生1 (1.国立研究開発法人 海洋研究開発機構、2.東京大学生産技術研究所)

キーワード:富栄養化、気候変動、海洋基礎生産、貧酸素化

大気や河川から海洋への栄養塩流入は、人間活動によって大幅に増加している。このような人間活動による富栄養化は、海洋の基礎生産を促進し、気候変動による減少を部分的に打ち消す可能性がある。また、海洋内部への有機物輸送が増え、分解増加に伴い溶存酸素が消費される。したがって、富栄養化は、炭素の吸収を促進し、気候変動による海洋の貧酸素化を増幅させる。しかし、CMIP5に参加した前世代の地球システムモデルでは、富栄養化は考慮されていなかった。CMIP6の地球システムモデルのいくつかは富栄養化の影響を考慮するようになったが、各モデルにおいてさえ、富栄養化が海洋炭素•酸素循環に与える影響は評価されてはいない。

本研究では、大気及び河川からの人為的な栄養塩流入を考慮したCMIP6モデルの一つ(MIROC-ES2L)によるヒストリカル実験を用いて、過去の全球スケールの海洋基礎生産、炭素吸収、貧酸素化に対する富栄養化の影響が気候変動の影響と同程度であることを示す。特に、以下の2つの重要な結果が得られた。1つ目は、富栄養化によるNPP増加が、海洋成層化によるNPP減少を相殺すること。2つ目は、富栄養化が気候変動と同程度に貧酸素化に寄与し、富栄養化を考慮することでモデルと観測の不整合が一部改善されることである。富栄養化の寄与を切り分けた結果、大気からの窒素流入の影響が全体の2/3に寄与し、残りは主に河川からの窒素流入によって引き起こされていた。本研究の結果から、人間活動が海洋生態系•物質循環に与える影響を評価するためには、富栄養化と気候変動の両方の影響を考慮する必要があることが示された。

本発表では、将来予測実験における富栄養化と気候変動の影響の関係についても紹介する予定である。