13:45 〜 15:15
[ACG45-P03] 風波レイノルズ数を用いた海洋性大気における波しぶき起源エアロゾル濃度の診断
キーワード:波しぶきエアロゾル、海洋大気境界層、SSA放出フラックスパラメタリゼーション、南大洋、西部北太平洋、風波レイノルズ数
海洋性大気中のエアロゾル粒子は海洋上の雲粒生成にとって重要な役割を果たしている。波しぶきに起因するエアロゾル(SSA)の放出フラックスは直接計測が難しく、既往研究においては現場で観測されたエアロゾル濃度と海上10 mの水平風速の関係付けが盛んに取り組まれてきた。一方、海洋物理学の観点では、海洋の砕波が飛沫、つまりSSAを生成する現象に関して、海面の白波被覆率が重要になることが知られており、その変動要因を説明するパラメータとして、海上10 mの水平風速よりも風波レイノルズ数Re(Zhao and Toba, 2001)が優れているとされている。既往研究において、Ovadnevaiteらによってアイルランドのメイスヘッドにおける海洋大気観測から、Reをベースとした粒子サイズ別のSSA放出フラックスのパラメタリゼーション"OSSA-SSSF"(Ovadnevaite et al., 2014)が開発された。本研究では、我々が過去の研究航海において観測した気象・海象データからReを算出し、海洋性大気境界層(MBL)における微小粒径範囲のエアロゾル数密度サイズ分布や海塩粒子濃度との関係性をOSSA-SSSFを用いて解析した。発表では、南大洋(太平洋セクター)及び西部北太平洋上で行われた海洋地球研究船「みらい」の研究航海(MR16-09及びMR21-01)で得られた重要な知見として、OSSA-SSSFが不確定性の範囲で微小粒径のSSA濃度推定に有効であること、MBL内のSSA濃度変動にとってReだけでなく表層混合層高度も重要であること、南大洋において雲凝結核(CCN)として働きうるエアロゾルはSSAのみでは説明できず、上部対流圏で起こる新粒子生成が重要なCCNの起源である可能性について議論する。