日本地球惑星科学連合2023年大会

講演情報

[J] オンラインポスター発表

セッション記号 A (大気水圏科学) » A-CG 大気海洋・環境科学複合領域・一般

[A-CG46] 北極域の科学

2023年5月25日(木) 10:45 〜 12:15 オンラインポスターZoom会場 (9) (オンラインポスター)

コンビーナ:両角 友喜(国立環境研究所)、島田 利元(宇宙航空研究開発機構)、堀 正岳(東京大学大気海洋研究所)、川上 達也(北海道大学)

現地ポスター発表開催日時 (2023/5/24 17:15-18:45)

10:45 〜 12:15

[ACG46-P04] 春季の塩分データから推定されるオホーツク海南部における海氷融解量の経年変動

*本田 茉莉子1大島 慶一郎2,3Vigan Mensah2西岡 純2,3、Stephen Riser4、佐藤 政俊5 (1.北海道大学大学院環境科学院、2.北海道大学低温科学研究所、3.北海道大学北極域研究センター、4.ワシントン大学、5.北海道立総合研究機構稚内水産試験場)


キーワード:海氷融解、地球温暖化、オホーツク海

オホーツク海は、北半球の季節海氷域の南限である。海氷生産は主に北西部沿岸ポリニヤでおこり、卓越風と東樺太海流の影響を受けて南へ移流する。春季には、海氷が融解することで南部海洋に淡水と負の熱を供給する。しかし、オホーツク海における海氷を介する熱と淡水の輸送に関しては、その変動はもとより気候値としても観測からは定量的な議論はされていない。本研究では、観測データから海氷融解量を推定し、その経年変動を明らかにすることを目的として解析を行った。海氷が融解すると、表層に明瞭な低塩分層が出現する。本研究では、オホーツク海で今までに得られた海氷融解後の海洋観測データを用いて、表層の塩分欠損を海氷融解による低塩分水供給とみなし、塩分欠損量を鉛直積分することで海氷融解量を見積もった。全データの約20%が融解量を推定できる明瞭な塩分欠損を示しており、それらのデータから融解量を見積もった。オホーツク海南部(北緯48 度以南)の平均的な海氷融解量は厚さに換算すると62cmとなった。淡水供給量に換算すると2.5×1011m3となり、アムール川からの平均年間流出量に匹敵する量の淡水が海氷融解に伴い供給されることが観測データに基づいて初めて示された。さらに、南部の融解量の経年変動は、過去約40年間で15cmの減少トレンドを示していた。塩分欠損による融解量の推定とは別に、4,5 月の全海洋観測データを用いて、1990年以前と 1990年以降の表層の塩分変化の解析も行った結果、オホーツク海南部では表層から水深50mまでは平均的に高塩化傾向を示していた。この高塩化傾向がすべて海氷融解量の減少に伴う淡水供給の減少によると考えた場合、融解量の減少は厚さに換算して14cmとなる。以上より、全く異なる手法から同程度の海氷融解量の減少トレンドが推定され、結果にも手法にもある程度の信頼性を得られたと考える。