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[ACG46-P10] 夏季の北ユーラシアにおけるAtmospheric Riversの気候学的特徴
キーワード:北ユーラシア、大気の川、降水システム、北極前線帯、総観規模擾乱、大気水循環
Atmospheric Rivers (大気の川: ARs)は強化された狭い帯状の強い水蒸気輸送を伴う総観規模降水システムとして知られている。それらは一般的には温帯低気圧と結合した前線と雲バンドが発達し豪雨と洪水を中緯度域大陸沿岸部でもたらすことが多い。一方高緯度域の大陸内陸部においても、ARsは極端な天候イベントを引き起こす擾乱の一つである可能性が高い。本研究では北ユーラシア内陸部でのARsの構造と性質を調べた。解析期間は43年間(1979-2021年)の夏季(6-8月)である。特にシベリアにおいて水文気象学的影響をもたらすARsの理解に重点を置いた。AR発達イベントは、特定の閾値を超えた鉛直積分水蒸気輸送に階層型クラスター分析を適用して客観的に抽出した。これらのAR発達イベントは最終的に5つの型に分類され、それぞれの型について、合成図解析により降水、低気圧活動、前線活動、雲量の分布を調べた。用いたデータはJRA-55大気データ、MSWEPv2.8降水データおよびISCCP-H衛星観測雲量データである。抽出した5つのAR型はさらに内陸型と北極海沿岸型に類型化した。内陸型ARsはその軸が南西-北東方向に傾き北東側の温暖前線活動域に向かって強い水蒸気輸送が貫入し、降水帯は温暖前線活発域に沿って発達する。北極海沿岸型ARsは東西方向に伸びた構造がより顕著で、その軸に沿って温暖前線活発域が発達し、降水帯が結合している。どのAR型においてもその降水域に沿って対流雲と乱層雲の活動が高まっていて、これらは北ユーラシア域ARsの主要な降水雲のタイプであることがわかった。