10:00 〜 10:15
[AHW18-05] 亜熱帯島嶼の持続可能な水資源利用に向けた参画・合意に基づく流域ガバナンスの構築
キーワード:流域ガバナンス、亜熱帯島嶼、参画・合意
発表者らは、土地や水資源が限られている亜熱帯島嶼の持続的な水資源利用に向けた参画・合意にもとづく流域ガバナンスを社会課題として提起し、沖縄本島南部地域で豊富な水資源を有する八重瀬町とともに、共同プロジェクトに取り組んだ(JST SDGsの達成に向けた共創的研究開発プログラムソリューション創出フェーズ
「 亜熱帯島嶼の持続可能な水資源利用に向けた参画・合意に基づく流域ガバナンスの構築」2019年度後期~2022年度)。八重瀬町では、2018年に第二次八重瀬町総合計画で「豊かな水資源の保全と水循環の健全化」というビジョンが打ち出され、行動計画の策定が求められている。
プロジェクトでは、①「科学情報の可視化」、②「正確な科学情報に基づく合理的意思決定」、③「住民参加型アクションリサーチによる地域のコミュニケーションの活性化」、④「PDCAサイクルを用いた方法論と解決策の高度化」の4つの項目を循環させた対話と協働を通して、社会課題の解決を図る計画を立てた。
①「科学情報の可視化」の作業は、A班のメンバーが蓄積した技術シーズをもとに約2年間、月に1回の定期調査を実施し、地下水中の硝酸性窒素の窒素負荷源の寄与率の季節変動を算出するとともに、八重瀬町の表流水や地下水の流れを再現する3次元水循環シミュレーションモデルを構築し、八重瀬町の水循環を可視化した。①の研究開発期間中、水資源とその周辺環境に対する住民の意識を把握し、②の項目を円滑に遂行するため八重瀬町民9000人を対象とした大規模アンケート調査を行った。その結果、「地下水保全と産業振興の是非」における項目から、多くの住民は地下水保全を重視しており、地下水保全の推進に対し、一定金額の支払い意思があることが分かった。また、八重瀬町の農家の協力を得て、室内試験の結果をもとにした現地圃場での減窒素肥料試験をおこなった。結果、沖縄県の栽培指針より25%減肥をおこなっても、慣行施肥に比べ収量が落ちないことが明らかになった。③の項目は、コロナ禍により対面イベントの機会は減ってしまったが、先進地域の事例を当事者から学び、横展開対象の与論町とつないで子どもたちが交流するなどオンラインでの繋がりを積極的に活用した。また、「みずのわカレッジ」として、地域づくりに関心のある大学生が、農家さんとともに生産者と消費者をつなぐ農業体験イベントを企画したり、地域の小中学生が八重瀬町の自然環境に実際に触れて学ぶサマースクールを実施するなど、感染拡大に配慮しつつも最大限のアクションリサーチはおこなうことができた。④の項目では、①で得られた科学的知見をもとにステークホルダーインタビューを実施し、複合的な要因からなる八重瀬町の水循環の健全化に関する問題構造を整理した。最終的に、プロジェクトのすべてのプロセスを通して、「流域協議会の組織化」、「ステークホルダー間の対話・協働の促進」を重視し、より丁寧に町民のニーズをくみ取りながら、プロジェクト終了後の事業計画を遂行していく方向性へと帰着した。
本プロジェクトで、水循環をめぐる社会課題解決のために示したモデルは、二段階のステップに分かれる。第一段階は、地域住民や行政、各ステークホルダーの水循環に対する理解を得るため、科学的知見にもとづく「水循環の可視化」ツールを作成することである。対象地域を詳細に分析することによって、水資源の利用と管理について対応策を具体的に検討できるようになる。第二のステップは各実施項目がより循環的に相互に関わりあうものとなる。あげられる項目は次の通りである。
①次世代への環境教育や地域住民の啓発、②水資源利用についての歴史や地域知の掘り起こし、③地域の水循環システムにおける問題構造の分析、④情報を共有するプラットホームの創出。
それぞれの地域によって、科学的な視点からみた水循環のシステムと、その流域ガバナンスに携わるステークホルダーの種類、各々の関係性は異なる。研究者側に求められることは、まずどのようなステークホルダーが地域に存在しているのかを理解したうえで、それぞれのステークホルダーが抱える問題の構造を明らかにし、その問題に寄り添う形でアプローチするスタンスである。
「 亜熱帯島嶼の持続可能な水資源利用に向けた参画・合意に基づく流域ガバナンスの構築」2019年度後期~2022年度)。八重瀬町では、2018年に第二次八重瀬町総合計画で「豊かな水資源の保全と水循環の健全化」というビジョンが打ち出され、行動計画の策定が求められている。
プロジェクトでは、①「科学情報の可視化」、②「正確な科学情報に基づく合理的意思決定」、③「住民参加型アクションリサーチによる地域のコミュニケーションの活性化」、④「PDCAサイクルを用いた方法論と解決策の高度化」の4つの項目を循環させた対話と協働を通して、社会課題の解決を図る計画を立てた。
①「科学情報の可視化」の作業は、A班のメンバーが蓄積した技術シーズをもとに約2年間、月に1回の定期調査を実施し、地下水中の硝酸性窒素の窒素負荷源の寄与率の季節変動を算出するとともに、八重瀬町の表流水や地下水の流れを再現する3次元水循環シミュレーションモデルを構築し、八重瀬町の水循環を可視化した。①の研究開発期間中、水資源とその周辺環境に対する住民の意識を把握し、②の項目を円滑に遂行するため八重瀬町民9000人を対象とした大規模アンケート調査を行った。その結果、「地下水保全と産業振興の是非」における項目から、多くの住民は地下水保全を重視しており、地下水保全の推進に対し、一定金額の支払い意思があることが分かった。また、八重瀬町の農家の協力を得て、室内試験の結果をもとにした現地圃場での減窒素肥料試験をおこなった。結果、沖縄県の栽培指針より25%減肥をおこなっても、慣行施肥に比べ収量が落ちないことが明らかになった。③の項目は、コロナ禍により対面イベントの機会は減ってしまったが、先進地域の事例を当事者から学び、横展開対象の与論町とつないで子どもたちが交流するなどオンラインでの繋がりを積極的に活用した。また、「みずのわカレッジ」として、地域づくりに関心のある大学生が、農家さんとともに生産者と消費者をつなぐ農業体験イベントを企画したり、地域の小中学生が八重瀬町の自然環境に実際に触れて学ぶサマースクールを実施するなど、感染拡大に配慮しつつも最大限のアクションリサーチはおこなうことができた。④の項目では、①で得られた科学的知見をもとにステークホルダーインタビューを実施し、複合的な要因からなる八重瀬町の水循環の健全化に関する問題構造を整理した。最終的に、プロジェクトのすべてのプロセスを通して、「流域協議会の組織化」、「ステークホルダー間の対話・協働の促進」を重視し、より丁寧に町民のニーズをくみ取りながら、プロジェクト終了後の事業計画を遂行していく方向性へと帰着した。
本プロジェクトで、水循環をめぐる社会課題解決のために示したモデルは、二段階のステップに分かれる。第一段階は、地域住民や行政、各ステークホルダーの水循環に対する理解を得るため、科学的知見にもとづく「水循環の可視化」ツールを作成することである。対象地域を詳細に分析することによって、水資源の利用と管理について対応策を具体的に検討できるようになる。第二のステップは各実施項目がより循環的に相互に関わりあうものとなる。あげられる項目は次の通りである。
①次世代への環境教育や地域住民の啓発、②水資源利用についての歴史や地域知の掘り起こし、③地域の水循環システムにおける問題構造の分析、④情報を共有するプラットホームの創出。
それぞれの地域によって、科学的な視点からみた水循環のシステムと、その流域ガバナンスに携わるステークホルダーの種類、各々の関係性は異なる。研究者側に求められることは、まずどのようなステークホルダーが地域に存在しているのかを理解したうえで、それぞれのステークホルダーが抱える問題の構造を明らかにし、その問題に寄り添う形でアプローチするスタンスである。