日本地球惑星科学連合2023年大会

講演情報

[E] 口頭発表

セッション記号 A (大気水圏科学) » A-HW 水文・陸水・地下水学・水環境

[A-HW19] 水循環・水環境

2023年5月24日(水) 10:45 〜 12:00 105 (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:榊原 厚一(信州大学理学部理学科)、岩上 翔(国立研究開発法人 森林研究・整備機構 森林総合研究所)、林 武司(秋田大学教育文化学部)、福士 圭介(金沢大学環日本海域環境研究センター)、座長:飯田 真一(国立研究開発法人森林研究・整備機構森林総合研究所森林研究部門森林防災研究領域水保全研究室)、榊原 厚一(信州大学理学部理学科)、岩上 翔(国立研究開発法人 森林研究・整備機構 森林総合研究所)、林 武司(秋田大学教育文化学部)、福士 圭介(金沢大学環日本海域環境研究センター)

11:15 〜 11:30

[AHW19-08] 社会水文学の実践的展開に向けて:スリランカのKelani川下流域コミュニティでの研究事例を通した考察

★招待講演

*中村 晋一郎1、Perera Chamal1 (1.名古屋大学)

キーワード:社会水文学、洪水、リスク情報、スリランカ、実践的

「社会水文学」(socio-hydrology)が,社会と水の共進化を理解するための学問として登場してから10年が経つ.国際水文科学会(IAHS)の10年計画であるPanta Rhei scientific decadeを通して,世界各地で社会と水の共進化に関する研究が進んだ.社会水文学は,人間-水システムの相互作用の中に潜む「規則性」または「再帰性」を見出す実証的かつ学際的な学問として始まったが,現在はその枠組みを超えて,水資源管理,リスク管理,適応デザインといった,より実践性あるいは超学際性を志向し始めている(例えば,EGU General Assembly 2023のSession HS5.11: Coupled human water systems: advances in hydro-social and socio-hydrological research to support water management and governance, Convener: Britta Höllermann et. al.).

本講演では,これまでの社会水文学の動向を概観しつつ,筆者らが取り組んでいるスリランカのKelani川下流域での研究事例を紹介する.この研究は,ハザードマップや防災教育といった洪水リスク情報が洪水への集合的記憶に与える影響の理解と,そのダイナミクスの社会水文学モデルへの搭載を目的として,洪水常習地であるKelani川下流域のコミュニティで6ヶ月に渡って2回の洪水リスク情報に関するインタビュー調査を実施し,その結果をもとに改良した社会水文モデルによって洪水リスク情報が水害被害に与える効果を評価した.その結果は,社会水文モデルが洪水リスク情報の定量評価に有用であることを示唆している.この研究事例を踏まえて,最後に,アジアあるいは日本における治水政策への社会水文学の実践的な応用可能性について考察する.