日本地球惑星科学連合2023年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 A (大気水圏科学) » A-HW 水文・陸水・地下水学・水環境

[A-HW23] 同位体水文学2023

2023年5月24日(水) 13:45 〜 15:00 106 (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:安原 正也(立正大学地球環境科学部)、浅井 和由(株式会社 地球科学研究所)、中村 高志(山梨大学大学院・国際流域環境研究センター)、大沢 信二(京都大学大学院理学研究科附属地球熱学研究施設(別府))、座長:安原 正也(立正大学地球環境科学部)、中村 高志(山梨大学大学院・国際流域環境研究センター)、浅井 和由(株式会社 地球科学研究所)、森川 徳敏(産業技術総合研究所 活断層・火山研究部門)

13:45 〜 14:10

[AHW23-01] 環境トレーサーを用いた地熱流体の滞留時間推定

★招待講演

*柏谷 公希1、犬飼 郁也2、酒井 郁人1、多田 洋平1、松本 健介3、松崎 浩之4小池 克明1 (1.京都大学大学院工学研究科、2.京都大学大学院工学研究科(前所属)、3.奥会津地熱株式会社、4.東京大学総合研究博物館)

キーワード:地熱流体、滞留時間、環境トレーサー

地球温暖化に伴う気候変動を背景として,日本を含む多くの国で2050年までのカーボンニュートラルの達成が目標とされており,そのような状況の中,再生可能エネルギーの活用促進が求められている。地熱エネルギーは再生可能エネルギーの一種であり,村岡ほか(2008)により推定された日本の地熱資源量は2347万kWと世界有数であるが,その活用が進んでいるとは言い難い。代表的な地熱エネルギーの利用形態である地熱発電では,代表的な温室効果ガスである二酸化炭素のライフサイクル排出量が,火力はもちろんのこと,風力,太陽光,原子力などの発電方法に比べても少ないとの指摘もある(今村ほか,2016)。地熱発電では,高温の地熱流体を胚胎する地下の地熱貯留層から坑井を通して地熱流体を地表まで取り出し,発電に利用した後に地下に還元する。持続的に地熱発電を行うためには蒸気量や貯留層温度が維持される必要があるが,地熱発電の開始後に貯留層圧力が低下し,持続的な発電が困難になってしまう場合がある。地熱エネルギーの持続的な活用を考えるためには,地熱システムにおいて熱を運ぶ媒体である地熱流体の起源や涵養・循環の状態,特に循環の速さに関する情報が重要となり,循環の速さの指標として地熱流体の滞留時間が利用可能と考えられる。そのような観点から,発表者らのグループでは環境トレーサーを用いた地熱流体の滞留時間推定法に関する研究を進めている。本発表では,地熱流体を含む地下水の滞留時間推定に用いられている環境トレーサーを概観した上で,インドネシアや福島県の地熱地域における適用事例を紹介し,地熱流体の滞留時間推定を目的とした環境トレーサーの活用法について議論する。

引用文献
今村栄一・井内正直・坂東茂(2016):日本における発電技術のライフサイクルCO2排出量総合評価,電力中央研究所報告,Y06.
村岡洋文・阪口圭一・駒澤正夫・佐々木進(2008):日本の熱水系資源量評価2008,日本地熱学会誌,30,Supplement,B01.