14:15 〜 14:30
[AOS14-03] 有人宇宙探査のための物理化学的生命維持装置
★招待講演
キーワード:環境制御・生命維持技術、空気再生・水再生、酸素の循環
宇宙船内の空気
国際宇宙ステーション(ISS)は高度400km上空を飛行しています。そこには6名程度の宇宙飛行士が滞在しています。ISS内部は地上と同じ1気圧に保たれており、空気や水は持参する必要がありそれを清浄化し、温度・湿度を維持する環境制御・生命維持システム: ECLSS (Environmental Control Life Support System)が必要です。人間の肺は酸素分圧0.2気圧の空気を呼吸するようにできています。宇宙ステーションでは地上と同じ比率の窒素と酸素で満たされています。船外へ逃げる空気の量は通常活動時で1日に約3.6グラムと言われています。ステーションの窒素と酸素は地上から運び込みます。
NASAの水電解装置(OGA: Oxygen Generation Assembly) は、水電解により酸素を発生し、水素は危険なので宇宙へ排気します。酸素を消費し二酸化炭素をキャビンへ排出するため二酸化炭素濃度が上昇します、二酸化炭素濃度が高すぎると十分な酸素がある場合でも気分が悪くなり死亡する可能性もあります。地球では二酸化炭素濃度は350ppm-400ppm程度ですが、ISSの内部では4000ppm以上あり地上に比べ10倍程度濃度が高いですが、この程度では健康被害はありません。スペースシャトルではLiOHは二酸化炭素除去のメイン装置でしたが、ISSでは緊急時のバックアップなどに補助的に使われています。
2LiOH+CO2 → Li2CO3+H2O ・・・(1)
LiOHキャニスターは頻繁に交換する必要があり、長期のミッションを行うためには再生型の空気浄化装置が必要となります。CDRA(シードラ)(Carbon Dioxide Removal Assembly)は、米国の二酸化炭素除去装置で、フィルターを通過した空気はシリカゲルの入った吸着筒で除湿され、ゼオライトの吸着筒の中を通過します。二酸化炭素はゼオライトに吸着され、一方酸素と窒素は通り抜けます。ゼオライトの吸着筒が二酸化炭素で飽和した時、飽和した吸着剤を加熱することにより、吸収されていた二酸化炭素を脱着し船外へと排出します。CDRAは、二酸化炭素の吸着部を2式有しているため、片方の吸着部を加熱して二酸化炭素を放出する再生プロセス中に、もう一方で吸着が可能なため、連続運転ができます。
また、人間は二酸化炭素以外に少量のガスを排出します。腸で生成されるメタン、汗に含まれるアンモニア、尿や呼気に含まれるアセトン、メチルアルコール、一酸化炭素などです。これらは微量有害ガス除去装置TCCS: Trace Contamination Control Assemblyにより活性炭や触媒によりISS内の空気から取り除かれます。
ISSの初期運用では酸素は水電解により生成し、水素は宇宙に排気していました。一方キャビン内の二酸化炭素も分離濃縮して宇宙へ捨てています。この捨てた水と二酸化炭素から何か有用なものが得られないでしょうか。それを解決するアイデアがサバチエ反応で水を生成するという考えです。NASAはサバチエ反応装置を搭載して3人が排出するCO2を還元して水を生成しています。その水を電気分解することにより酸素を作っています。サバチエ反応の化学式は式(2)の通りで二酸化炭素に含まれる酸素は水に含まれる酸素となります。
CO2 + 4H2 → CH4 + 2H2O ・・・(2)
地上では植物が二酸化炭素を吸収し酸素を生成していますが、宇宙船では物理化学的手法により空気を再生します。
宇宙船内の水
平均的なアメリカ人は一日に605リットルの水を消費しているそうです。宇宙ステーションの搭乗員は一日に3.5リットル程度の水で生活しています。
尿処理装置UPA(Urine Processor Assembly)は、主にWRSラック2に搭載されており、尿を飲用水へ再生します。尿処理の原理は、ヒータで尿を含んだ水を加熱して水蒸気を生成します。この処理の最も重要な部分は蒸留装置DA(Distillation Assembly)です。内部を0.048気圧に減圧することで沸点を下げています。尿は円筒形の加熱器の中において220rpmで回転し、遠心力によって液体は円筒内の内側に押しつけられ、蒸気は中央部から集められ蒸留水として取り出されます。不揮発性の不純物は蒸発しないため97%を除去できますが、アンモニアやアルコールは揮発します。揮発成分は酸化触媒により酸化され、イオン交換樹脂で処理され純粋を生成し、ヨウ素を添加して殺菌することにより飲料水になります。
国際宇宙ステーション(ISS)は高度400km上空を飛行しています。そこには6名程度の宇宙飛行士が滞在しています。ISS内部は地上と同じ1気圧に保たれており、空気や水は持参する必要がありそれを清浄化し、温度・湿度を維持する環境制御・生命維持システム: ECLSS (Environmental Control Life Support System)が必要です。人間の肺は酸素分圧0.2気圧の空気を呼吸するようにできています。宇宙ステーションでは地上と同じ比率の窒素と酸素で満たされています。船外へ逃げる空気の量は通常活動時で1日に約3.6グラムと言われています。ステーションの窒素と酸素は地上から運び込みます。
NASAの水電解装置(OGA: Oxygen Generation Assembly) は、水電解により酸素を発生し、水素は危険なので宇宙へ排気します。酸素を消費し二酸化炭素をキャビンへ排出するため二酸化炭素濃度が上昇します、二酸化炭素濃度が高すぎると十分な酸素がある場合でも気分が悪くなり死亡する可能性もあります。地球では二酸化炭素濃度は350ppm-400ppm程度ですが、ISSの内部では4000ppm以上あり地上に比べ10倍程度濃度が高いですが、この程度では健康被害はありません。スペースシャトルではLiOHは二酸化炭素除去のメイン装置でしたが、ISSでは緊急時のバックアップなどに補助的に使われています。
2LiOH+CO2 → Li2CO3+H2O ・・・(1)
LiOHキャニスターは頻繁に交換する必要があり、長期のミッションを行うためには再生型の空気浄化装置が必要となります。CDRA(シードラ)(Carbon Dioxide Removal Assembly)は、米国の二酸化炭素除去装置で、フィルターを通過した空気はシリカゲルの入った吸着筒で除湿され、ゼオライトの吸着筒の中を通過します。二酸化炭素はゼオライトに吸着され、一方酸素と窒素は通り抜けます。ゼオライトの吸着筒が二酸化炭素で飽和した時、飽和した吸着剤を加熱することにより、吸収されていた二酸化炭素を脱着し船外へと排出します。CDRAは、二酸化炭素の吸着部を2式有しているため、片方の吸着部を加熱して二酸化炭素を放出する再生プロセス中に、もう一方で吸着が可能なため、連続運転ができます。
また、人間は二酸化炭素以外に少量のガスを排出します。腸で生成されるメタン、汗に含まれるアンモニア、尿や呼気に含まれるアセトン、メチルアルコール、一酸化炭素などです。これらは微量有害ガス除去装置TCCS: Trace Contamination Control Assemblyにより活性炭や触媒によりISS内の空気から取り除かれます。
ISSの初期運用では酸素は水電解により生成し、水素は宇宙に排気していました。一方キャビン内の二酸化炭素も分離濃縮して宇宙へ捨てています。この捨てた水と二酸化炭素から何か有用なものが得られないでしょうか。それを解決するアイデアがサバチエ反応で水を生成するという考えです。NASAはサバチエ反応装置を搭載して3人が排出するCO2を還元して水を生成しています。その水を電気分解することにより酸素を作っています。サバチエ反応の化学式は式(2)の通りで二酸化炭素に含まれる酸素は水に含まれる酸素となります。
CO2 + 4H2 → CH4 + 2H2O ・・・(2)
地上では植物が二酸化炭素を吸収し酸素を生成していますが、宇宙船では物理化学的手法により空気を再生します。
宇宙船内の水
平均的なアメリカ人は一日に605リットルの水を消費しているそうです。宇宙ステーションの搭乗員は一日に3.5リットル程度の水で生活しています。
尿処理装置UPA(Urine Processor Assembly)は、主にWRSラック2に搭載されており、尿を飲用水へ再生します。尿処理の原理は、ヒータで尿を含んだ水を加熱して水蒸気を生成します。この処理の最も重要な部分は蒸留装置DA(Distillation Assembly)です。内部を0.048気圧に減圧することで沸点を下げています。尿は円筒形の加熱器の中において220rpmで回転し、遠心力によって液体は円筒内の内側に押しつけられ、蒸気は中央部から集められ蒸留水として取り出されます。不揮発性の不純物は蒸発しないため97%を除去できますが、アンモニアやアルコールは揮発します。揮発成分は酸化触媒により酸化され、イオン交換樹脂で処理され純粋を生成し、ヨウ素を添加して殺菌することにより飲料水になります。