日本地球惑星科学連合2023年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 A (大気水圏科学) » A-OS 海洋科学・海洋環境

[A-OS17] 沿岸域の海洋循環と物質循環

2023年5月23日(火) 15:30 〜 16:45 102 (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:和田 茂樹(筑波大学)、高橋 大介(東海大学)、永井 平(水産研究教育機構)、増永 英治(Ibaraki University)、座長:増永 英治(Ibaraki University)、和田 茂樹(筑波大学)

15:30 〜 15:45

[AOS17-06] 有明海諌早湾における夏季の底層溶存酸素濃度の経年変化

*速水 祐一1、関  愛佳1、戸田 悠斗1、松田 康太郎1 (1.佐賀大学)

キーワード:貧酸素水塊、有明海、諫早湾、経年変化

有明海では、湾奥西部と諫早湾において毎年夏季になると貧酸素水塊が発生し、二枚貝の斃死を引き起こすなど大きな問題となっている。有明海湾奥西部の夏季の底層溶存酸素濃度(DO)の経年変化については徳永ら(2013)が解析しており、底層DOと潮流振幅の間に高い正の相関が見られることを示している。すなわち、潮流が強く、潮汐混合が強まると底層DOは高くなる。一方で、諫早湾の貧酸素水塊の経年変化についてはこれまで解析されていない。そこで本研究では、諌早湾における2004年~2020年の17年間の底層溶存酸素濃度(DO)の経年変化を調べ、その変動機構について検討した。
用いたデータは、諫早湾の6カ所の観測櫓において九州農政局が自動昇降型水質測定装置で観測した水温・塩分・溶存酸素・クロロフィル蛍光・濁度データと、気象庁が大浦で観測した潮位データ、筑後川瀬ノ下における河川流量データである。
諫早湾中部~湾口部のB3~B6の4点では、夏季(7・8月)の底層DOと成層強度の間に有意な負の相関が見られた。また、底層DOと全層平均したクロロフィル蛍光の間には有意な正の相関が見られた。成層強度と筑後川河川流量の間には高い正の相関が見られた。一方で、大浦における潮位から求めたM2潮振幅と成層強度の間には相関は見られなかった。なお、この間のM2潮の振幅には月昇交点運動の影響を受けて約10cmの変化が生じていた。
以上の結果は、諫早湾の底層DOの経年変化は、1)筑後川からの淡水供給によって生じる成層強度の影響を強く受けていること、2)植物プランクトン光合成の影響を受けており、植物プランクトンが多いと底層DOは上がること、3)潮汐長期変化の影響は少ないことを示している。