15:45 〜 16:00
[AOS17-07] 高頻度観測で捕らえる志度湾岸壁定点の一次生産環境と植物プランクトン生物量の消長
キーワード:植物プランクトン生物量、栄養塩、鉛直混合、成層
海洋の植物プランクトン生産は高次生産の基盤となる。そのため、植物プランクトンの動向について調べることは海洋生態系についての理解を深めることにつながる。植物プランクトンの増殖を制御するのは、主に水温、光、栄養塩とされる。これらの環境要因は日々変動し、その変化に応じて植物プランクトンの生物量も変化する。その為、植物プランクトンの生物量変動について詳細に明らかにするためには、日々それらの様子を調査することが理想である。しかし、船舶による観測を1日おきなどの高頻度で行うことは難しい。そこで本研究では、志度湾岸壁において年間300日程度の高頻度で採水を行い、同定点の海洋環境の変化と植物プランクトン生物量の消長の様子を克明に捕えることを目的とした。
志度湾の岸壁に定めた定点Stn. Aにおいて、2022年1月–12月に計331回の観測を行った。表層水の採水を行い、水温、塩分、Chl a濃度、栄養塩濃度を測定した。また、観測機関を通じて天空光量子量を本定点から約5 ㎞離れた地点で計測した。香川県高松市の日降水量は気象庁のホームページより入手した。
水温は2月下旬に最小値を記録し、その後徐々に上昇し、8月上旬から9月上旬に最大値を記録し、時間経過とともに低下した。そこで、3月から9月上旬を成層強化期、9月上旬から2月を混合期と定義した。志度湾において最も不足する栄養塩であるDINの濃度は、成層強化期には通常1.5 μM未満と低かったが、混合期にはそれより高い濃度が観測された。成層強化期は、降水によって塩分が急激に低下し、それに伴ってDINが増加し、Chl a濃度が上昇する傾向があった。但し例外として、8月にKareniaのブルームによる赤潮が発生したが、これはDINの増加では説明できず、その原因も不明であった。混合期には、海域の栄養塩濃度と関係なくChl aの極大値が観測されており、極大時のDINは前後の濃度に比べて低くなっていた。このことから,志度湾では基本的に、成層強化期はDIN濃度が植物プランクトンの生物量を制御し、混合期は植物プランクトンの生物量がDIN濃度を制御している傾向があると示唆された。
志度湾の岸壁に定めた定点Stn. Aにおいて、2022年1月–12月に計331回の観測を行った。表層水の採水を行い、水温、塩分、Chl a濃度、栄養塩濃度を測定した。また、観測機関を通じて天空光量子量を本定点から約5 ㎞離れた地点で計測した。香川県高松市の日降水量は気象庁のホームページより入手した。
水温は2月下旬に最小値を記録し、その後徐々に上昇し、8月上旬から9月上旬に最大値を記録し、時間経過とともに低下した。そこで、3月から9月上旬を成層強化期、9月上旬から2月を混合期と定義した。志度湾において最も不足する栄養塩であるDINの濃度は、成層強化期には通常1.5 μM未満と低かったが、混合期にはそれより高い濃度が観測された。成層強化期は、降水によって塩分が急激に低下し、それに伴ってDINが増加し、Chl a濃度が上昇する傾向があった。但し例外として、8月にKareniaのブルームによる赤潮が発生したが、これはDINの増加では説明できず、その原因も不明であった。混合期には、海域の栄養塩濃度と関係なくChl aの極大値が観測されており、極大時のDINは前後の濃度に比べて低くなっていた。このことから,志度湾では基本的に、成層強化期はDIN濃度が植物プランクトンの生物量を制御し、混合期は植物プランクトンの生物量がDIN濃度を制御している傾向があると示唆された。