日本地球惑星科学連合2023年大会

講演情報

[E] オンラインポスター発表

セッション記号 B (地球生命科学) » B-BG 地球生命科学・地圏生物圏相互作用

[B-BG01] 地球惑星科学 生命圏フロンティア

2023年5月23日(火) 10:45 〜 12:15 オンラインポスターZoom会場 (18) (オンラインポスター)

コンビーナ:鈴木 志野(国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構)、奥村 知世(高知大学海洋コア総合研究センター)、諸野 祐樹(海洋研究開発機構高知コア研究所)、伊左治 雄太(海洋研究開発機構)

現地ポスター発表開催日時 (2023/5/22 17:15-18:45)

10:45 〜 12:15

[BBG01-P04] 海底下における微生物の珪藻化石への付着~海底下における微生物生存戦略?~

*西村 知泰1,2、森 郁晃1、寺田 武志3池原 実4諸野 祐樹1 (1.海洋研究開発機構高知コア研究所、2.高知大学大学院、3.マリン・ワーク・ジャパン、4.高知大学海洋コア総合センター)


キーワード:海底下、微生物、珪藻、グアイマス、南大洋、微生物群集解析

海洋生態系に生きる珪藻は、珪酸質の2枚の被殻に覆われた単細胞性の藻類である。全球バイオマス下では 444-582 Tg – Cと推察され、海洋の原生生物の約 1/3 を占める主要な一次生産者である。海洋における珪藻の役割として、CO2 吸収や炭素循環、生物ポンプが挙げられる。近年、海洋の水柱に生息している珪藻に特異的に付着する微生物がマリンスノーの形成を増加させ、生物学的ポンプの効率を高める可能性があることが報告された。
マリンスノーとして沈降した珪藻化石は、過去の地球環境変動を調べるための研究対象として重要である。一方、この化石と海底下に生息する微生物の関係については全く明らかになっていなかった。
2019 年に行われた国際深海科学掘削計画第 385 次掘削調査(グアイマス海盆)によって採取された堆積物試料において、珪藻殻の表面に周囲の堆積物より多数の微生物が付着している現象が観察された。極限的に栄養が不足する海底下において、珪藻化石に密度高く微生物が付着する現象は何らかの生態学的意味がある可能性が高い。そこで、本研究では珪藻化石に付着した微生物に着目し、付着細胞数や群集組成の解析を実施した。
試料は、グアイマス海盆の掘削コアから分取した堆積物と白鳳丸 KH-19-6 航海の南大洋大西洋区(ウェッデル海)、白鳳丸 KH-20-1 航海の南大洋インド洋区から採取した珪藻化石を含む堆積物コアを用いた。堆積物中に存在する微生物と珪藻化石に付着している微生物に対して細胞数の比較を行ったところ、採取地点によって微生物の付着率に大きく違いがあることが明らかとなった。また、微生物群集解析を行ったところ、珪藻付着、または堆積物中どちらかだけに存在する微生物種は確認できなかったが、群集組成に違いがあることが明らかとなった。
本発表では、堆積物中の微生物と珪藻化石に付着した微生物群集の違いに関して、採取地点における海洋学的な観点と微生物的な観点から考察・展望について議論する。