日本地球惑星科学連合2023年大会

講演情報

[E] オンラインポスター発表

セッション記号 B (地球生命科学) » B-BG 地球生命科学・地圏生物圏相互作用

[B-BG01] 地球惑星科学 生命圏フロンティア

2023年5月23日(火) 10:45 〜 12:15 オンラインポスターZoom会場 (18) (オンラインポスター)

コンビーナ:鈴木 志野(国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構)、奥村 知世(高知大学海洋コア総合研究センター)、諸野 祐樹(海洋研究開発機構高知コア研究所)、伊左治 雄太(海洋研究開発機構)

現地ポスター発表開催日時 (2023/5/22 17:15-18:45)

10:45 〜 12:15

[BBG01-P05] 日本列島に付加した岩石から読み取る海嶺熱水変質作用と生命活動の関係

*三上 裕香1岡本 和明2 (1.埼玉県立狭山緑陽高等学校、2.埼玉大学)

キーワード:海嶺熱水系、深海生物圏、中生代、生命起源、チャート-玄武岩

初期生命の痕跡は、太古代の中央海嶺熱水系の層状チャート中の石英脈から発見されている(Ueno et al., 2004)。海洋底の熱水活動は、生命の起源と進化に重要な役割を果たしてきた。顕生代の中央海嶺熱水活動は、太平洋周辺の造山帯などの大陸に付加した海洋地殻において確認できる。ジュラ紀の中央海嶺起源で、白亜紀に変成作用を受けた三波川変成岩中の硫化鉄(黄鉄鉱)からはメタン菌と考えられるバクテリア化石が認められている(安藤, 2016)。低温高圧型変成岩である三波川変成岩に別子型鉱床の存在等、ジュラ紀後期の海嶺熱水活動が地球史上最大の1つであったと考えられ、それに伴う高CO₂排出により、地球規模のocean anoxic events(海洋貧酸素事変)と地球温暖化が提案されている(Nozaki et al., 2013)。しかし日本列島に付加されたジュラ紀付加体からの熱水堆積物やそれに伴う生命化石の解析例は少ない。本研究では、中生代を通じた深海生物圏と海嶺活動との関係を明らかにするために、日本列島に付加したトリアス紀、ジュラ紀、白亜紀の付加体からチャート-玄武岩に関する地質調査・顕微鏡観察および化学分析による解析を行った。
鎌田(1995)によって地質学的層序が明らかにされている足尾帯においては、前期トリアス紀の黒色チャートの岩石学的・地球化学的な解析により、チャート層に対する多数の鉱脈に黄鉄鉱、graphite、石英が含まれていることが明らかになった。これは、ペルム紀末の地球規模での大量絶滅後に起きた生命活動の復活に、海嶺熱水活動が重要な役割を果たしたことを示唆している。ジュラ紀の赤色チャートには、多量の酸化鉄中に少量の黄鉄鉱が含まれていた。この結果は、ジュラ紀後期の大規模な海嶺熱水活動によって形成された黄鉄鉱が海洋地殻の熱水脈に沈殿し、その後、酸化的な環境に変化したことで、磁鉄鉱が黄鉄鉱を取り囲むように成長したことを示す。白亜紀の四万十付加体においては、チャート-玄武岩の関係も観察された。方解石+石英脈が豊富で、その縁にはチタン石-緑泥石-緑簾石の集合体が観察された。これは、CO2濃度が太古代の中央海嶺熱水環境(Kitajima et al., 2001)に匹敵することを示唆している。