日本地球惑星科学連合2023年大会

講演情報

[E] オンラインポスター発表

セッション記号 B (地球生命科学) » B-BG 地球生命科学・地圏生物圏相互作用

[B-BG01] 地球惑星科学 生命圏フロンティア

2023年5月23日(火) 10:45 〜 12:15 オンラインポスターZoom会場 (18) (オンラインポスター)

コンビーナ:鈴木 志野(国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構)、奥村 知世(高知大学海洋コア総合研究センター)、諸野 祐樹(海洋研究開発機構高知コア研究所)、伊左治 雄太(海洋研究開発機構)

現地ポスター発表開催日時 (2023/5/22 17:15-18:45)

10:45 〜 12:15

[BBG01-P06] 陸域地下深部におけるメタンに依存する巨大な微生物生態系の解明

*西村 大樹1,2幸塚 麻里子1、福田 朱里1石村 豊穂3、天野 由記5,4、別部 光里5宮川 和也4鈴木 庸平1 (1.東京大学大学院理学系研究科地球惑星科学専攻、2.海洋研究開発機構海洋機能利用部門生物地球化学センター、3.京都大学大学院人間・環境学研究科、4.日本原子力研究開発機構幌延深地層研究センター、5.日本原子力研究開発機構核燃料サイクル工学研究所)


キーワード:メタン資化代謝、地下生命圏、掘削コア試料培養実験

陸域地下生命圏には、地球上で最大の微生物生態系が存在すると試算されている。エネルギー源として、水素や埋没した有機物が重要であるとする従来の考え方に加えて、最新の研究によりメタンに依存した微生物生態系が従来のエネルギー源を利用する生態系に匹敵するほど広範に存在する可能性が指摘されている。地下深部のメタン酸化微生物に関する先行研究は、地下水試料を用いたオミックス研究が大半であり、メタン酸化活性については測定されていなかった。そこで、私達のグループは北海道の幌延町に位置する幌延深地層研究センターの地下214mから得られた地下水を対象に高圧培養実験を行い、地下水中でメタン酸化活性とメタン酸化古細菌(ANME)の存在量が相関することを明らかにした(Nishimura et al., 2023)。しかし、微生物の大部分は地下水ではなく岩石部に生息すると考えられているため、メタンのエネルギー源としての重要性を明らかにするには、岩石試料中のメタン酸化活性を測定する必要がある。

本研究では、2022年9月に幌延深地層研究センター隣接地で掘削された、深度200mから500mのコア試料を対象としてメタン酸化活性を評価した。掘削においては蛍光顔料を用いた汚染評価手法を適用し、掘削泥水及びコア試料の最外層、岩芯部の蛍光顔料濃度から岩芯部への掘削泥水の混入による汚染率を算出した。この評価手法によりほとんど汚染が認められなかった岩芯試料に対し、13C標識のメタンを代謝基質として添加し、一週間の常圧での培養実験を行った。培養後のDIC炭素同位体比からメタン酸化活性を評価した結果、210-320mのいずれの深度においても培養開始時と比較して700 – 1000‰程度、DICの炭素同位体比が重くなり、メタン酸化代謝機能を有する微生物が地下の幅広い領域において分布していることが示された。また、地下水中より岩石中の方が単位体積当たりで数桁高いメタン酸化活性を示しており、これらの結果は、1)地下水と比べてより多くの微生物が岩石内部に生息していること、2)陸域地下生命圏にとってメタンが重要なエネルギー源であることを支持する。

本研究には,経済産業省資源エネルギー庁委託事業「令和3,4年度 高レベル放射性廃棄物等の地層処分に関する技術開発事業(JPJ007597)(岩盤中地下水流動評価技術高度化開発)(ニアフィールドシステム評価確証技術開発)」の成果の一部を利用した。

参考文献:Nishimura et al., 2023, Environmental Microbiology Reports, EMI413146.