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[BCG07-06] 西オーストラリア・ピルバラ地塊における太古代(3.0 Ga) 大型球状アクリタークの産出について
キーワード:太古代、球状アクリターク、ピルバラ地塊、ファレル珪岩
有機質の膜や殻からなり,母岩からマセレーション(常温下フッ化水素酸などで分解すること)によって抽出された微化石をパリノモルフと呼ぶ。パリノモルフは先カンブリア時代,特に原生代の進化生物学・古生物学における重要な研究対象である。表面や断面の微細構造,突起などから真核生物とされるものもあるが[1],その多くは「現生生物の分類群への帰属がはっきりしないもの」,すなわち“アクリターク”として一括されている。ただ,耐酸性を有する外皮などを生成できる現生生物がシアノバクテリアと真核生物に限られているとされるため,アクリタークと呼んではいるものの,原生代パリノモルフはこれらの分類群のいずれかに属すると考える研究者は多い。シアノバクテリアの出現時期は少なくとも27億年前,真核生物の出現時期は20億年前頃と考えられている[2, 3]。一方で,30億年以上前の地層からも様々なパリノモルフが抽出されており[4],上記のような解釈に対する疑念も生じざるをえない。
以上のような背景を踏まえた上で,本発表では太古代の突起のない球状アクリターク(sphaeromorph acritarchs)について報告する。このようなアクリタークの代表例はレイオスファエリディア属であるが,それは球形〜楕円形を呈し,数十μmから300μmに達し,原生代以降の地層から多産する。中央に開口部を有するもの,開裂しているもの,表面に幾何学的模様があるものは,真核生物のシストとされ,それらの特徴を持たないものも真核生物起源と推測されてきた。ところがレイオスファエリディア様の球状アクリタークは,太古代(南アフリカの32億年前と25億年前の地層)にも存在し[5, 6],発表者らも西オーストラリアの30億年前のファレル珪岩層から, 他の形態の微化石(レンズ状,フィルム状,フィラメント状、小型球状など)とともに大量産出することを見出した。そして,その中には中央が開裂しているように見えるものが含まれている。そこで以下のような問いが生じる。
1) 開口部の存在や開裂は真核生物のシストの特徴とするその解釈に普遍性があるのか?
2) 開口部や開裂のないレイオスファエリディアとないものは同じ分類群なのか?
3) 太古代レイオスファエリディア様化石は真核生物やシアノバクテリアを含むのか?
4) 原生代レイオスファエリディアと太古代のそれらには系統的な関係があるのか,あるいは全く別個に進化したものなのか?
このような問いにチャレンジすることは,先カンブリア時代の生命進化に関する我々の理解を深めるはずである。とはいえ,まずは本発表において太古代のレイオスファエリディア様化石についてファレル珪岩層のものを中心にその産状や形態上の特徴について報告したい。
[1] Sugitani, K.et al., 2007. Diverse microstructures from Archaean chert from theMount Goldsworthy-Mount Grant area, Pilbara Craton, Western Australia: microfossils, dubiofossils, or pseudofossils? Precambrian Research 158, 228-262.
[2] Sugitani, K. et al, 2010. Biogenicity of morphologically diverse carbonaceous microstructures from the ca. 3400 Ma Strelley Pool Formation, in the Pilbara Craton, Western Australia. Astrobilogy 10, 899-920.
[3] Sugitani, K., 2022. Early Life on Earth: Evolution, Diversification, and Interactions. CRC press 239p.
[4] Kozawa, T. et al., 2018. Early Archean planktonic mode of life : Implications from fluid dynamics of lenticular microfossils. Geobiology 17, 113-126.
[5] Alleon, J. et al., 2018. Chemical nature of the 3.4 Ga Strelley Pool microfossils. Geochemical Perspectives Letters 7, 37-42.
[6] Sugitani, K. et al., 2018. Speciation of Paleoarcehan life demonstrated by analysis of the morphological variation of lenticular microfossil, from the Pilbara Craton of Western Australia. Astrobiology. 18, 1057-1070.
以上のような背景を踏まえた上で,本発表では太古代の突起のない球状アクリターク(sphaeromorph acritarchs)について報告する。このようなアクリタークの代表例はレイオスファエリディア属であるが,それは球形〜楕円形を呈し,数十μmから300μmに達し,原生代以降の地層から多産する。中央に開口部を有するもの,開裂しているもの,表面に幾何学的模様があるものは,真核生物のシストとされ,それらの特徴を持たないものも真核生物起源と推測されてきた。ところがレイオスファエリディア様の球状アクリタークは,太古代(南アフリカの32億年前と25億年前の地層)にも存在し[5, 6],発表者らも西オーストラリアの30億年前のファレル珪岩層から, 他の形態の微化石(レンズ状,フィルム状,フィラメント状、小型球状など)とともに大量産出することを見出した。そして,その中には中央が開裂しているように見えるものが含まれている。そこで以下のような問いが生じる。
1) 開口部の存在や開裂は真核生物のシストの特徴とするその解釈に普遍性があるのか?
2) 開口部や開裂のないレイオスファエリディアとないものは同じ分類群なのか?
3) 太古代レイオスファエリディア様化石は真核生物やシアノバクテリアを含むのか?
4) 原生代レイオスファエリディアと太古代のそれらには系統的な関係があるのか,あるいは全く別個に進化したものなのか?
このような問いにチャレンジすることは,先カンブリア時代の生命進化に関する我々の理解を深めるはずである。とはいえ,まずは本発表において太古代のレイオスファエリディア様化石についてファレル珪岩層のものを中心にその産状や形態上の特徴について報告したい。
[1] Sugitani, K.et al., 2007. Diverse microstructures from Archaean chert from theMount Goldsworthy-Mount Grant area, Pilbara Craton, Western Australia: microfossils, dubiofossils, or pseudofossils? Precambrian Research 158, 228-262.
[2] Sugitani, K. et al, 2010. Biogenicity of morphologically diverse carbonaceous microstructures from the ca. 3400 Ma Strelley Pool Formation, in the Pilbara Craton, Western Australia. Astrobilogy 10, 899-920.
[3] Sugitani, K., 2022. Early Life on Earth: Evolution, Diversification, and Interactions. CRC press 239p.
[4] Kozawa, T. et al., 2018. Early Archean planktonic mode of life : Implications from fluid dynamics of lenticular microfossils. Geobiology 17, 113-126.
[5] Alleon, J. et al., 2018. Chemical nature of the 3.4 Ga Strelley Pool microfossils. Geochemical Perspectives Letters 7, 37-42.
[6] Sugitani, K. et al., 2018. Speciation of Paleoarcehan life demonstrated by analysis of the morphological variation of lenticular microfossil, from the Pilbara Craton of Western Australia. Astrobiology. 18, 1057-1070.