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[BPT04-P05] 炭酸塩の飽和度とサンゴポリプの石灰化影響について
キーワード:白亜紀海水、海洋酸性化、飼育実験
サンゴなどの石灰化生物の骨格成長速度が、海水の炭酸塩に対する飽和度によって規定されているとする報告が多い。白亜紀は、大気及び表層海水の二酸化炭素分圧が1000 µatm以上と考えられ、予想されるpHは7.6と低い。一方、全アルカリ度は、今の約2倍であったと考えられ、その結果、海水の炭酸塩飽和度が高く維持されて、海洋生物の石灰化が可能であったと考えられている。この仮説を確認するため、高アルカリ度・低pHの白亜紀の海水組成を再現した海水を調製し、造礁性サンゴのミドリイシ類の初期ポリプを対象にした飼育実験を実施した(実験区1)。また、将来の海洋酸性化状況を模した通常のアルカリ度・低pHの実験区(実験区2)、白亜紀の海水を現在の大気二酸化炭素分圧の下で平衡化させた実験区(実験区3)、そして対照区(現代の表層海水)を設定した。白亜紀海水の炭酸塩飽和度は、対照区と同程度に設定された。1ヶ月のポリプ飼育により、実験区ごとに石灰化量及びマイクロフォーカスX線CTによる観察で顕著な違いみられた。白亜紀海水の実験区は、対象区とほぼ同程度の石灰化速度を示した。実験区3では、4つの実験区で最大の石灰化量を示し、実験区2は最小であった。今回の予察的な結果は、現在進行中の海洋酸性化がサンゴなどの海洋石灰化生物に与える石灰化阻害効果を持つこと、海水の炭酸飽和度が石灰化に重要なパランメータであることを確認するとともに、地球温暖化の緩和を目指して検討が進められている海洋アルカリ化の試みに関係した示唆にも富む。