日本地球惑星科学連合2023年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 G (教育・アウトリーチ) » 教育・アウトリーチ

[G-01] 地球科学関連教育と情報デザイン

2023年5月21日(日) 09:00 〜 10:15 103 (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:松岡 東香(清和大学)、山下 幹也(国立研究開発法人 産業技術総合研究所)、座長:松岡 東香(清和大学)、山下 幹也(国立研究開発法人 産業技術総合研究所)

09:45 〜 10:00

[G01-04] スマートフォンと3Dスキャンアプリを用いた簡易写真測量実習の試み

*小倉 拓郎1 (1.兵庫教育大学学校教育研究科)

キーワード:スマートフォン、3Dスキャン、写真測量、地球科学教育、3Dモデル

ステレオペア写真を用いた写真測量(フォトグラメトリ)は,地形や植生,森林などの分布や特徴を地図で表現する際に必要不可欠な技術である.写真測量を用いて数値表層モデル(DSM: Digital Surface Model)を作成することで,地形の高低差や樹木高をGIS上で表現することができる.従来,国の関係機関や企業が航空機から撮影した空中写真を用いることで,精度および正確度の高いDSMを取得することができた.近年,UAV(Unmanned Aerial Vehicle: ドローン)とSfM(Structure from Motion)を用いた写真測量が広く普及したことにより,研究者や学生個人が写真測量を身近に行う機会が増えた.一方で,写真測量を用いて精度および正確度の高いDSMを取得するためには,綿密な測量計画やカメラパラメータの設定等の知識が必要である.そこで,筆者はUAV-SfM写真測量実習の前段階としてスマートフォンと3Dスキャンアプリを用いた簡易的な3Dモデル作成実習を計画した.使用した3Dスキャンアプリは株式会社WOGO製のWIDARである(Fig. 1).WIDARは,iOS・AndroidどちらのOSでも利用することができる.また,クラウド上に写真をアップロードすることで,Wi-Fiに接続されていればスマートフォンのスペックに依存することなく3Dモデルを作成することができる.
本授業実践は,A大学理工学部3・4年対象の講義「空間情報モデリング」およびB大学地球学類2年生対象の実験「地球学野外調査法」の一環として実施した.履修者は,A大学が125名,B大学が53名であった.実習では,はじめにアプリの使用方法について解説を行った.その後,学生たちには教室の外に移動してもらい,学内で最低5つの対象物を撮影するように指示した.その際,構造物と凹凸のある地形を必ず1つずつ含めるように指示した.WIDARで3Dモデルを作成するためには,まず複数枚の写真を撮影することが必要である.そこで,学生たちには対象物をさまざまな角度から20枚以上200枚以下の範囲で撮影してもらった.また,測量には納期を守ることが必要であることを説明し,写真撮影の作業時間は55分間と設定した.指定した時間までに作成した3Dモデルの共有リンクを学習管理サイトmanabaにアップロードするよう指示した.課題提出の20分前には教室に戻り,Wi-Fiに接続してアップロード作業を行うことを推奨した.
課題提出後,近隣の学生とモデルを共有しながら,3Dモデルを作りやすい対象物,写真の撮影方法の工夫など,写真測量を行う上で必要な設定について議論してもらった.授業後にmanabaでアンケートを実施し,写真測量に必要な技術について再度整理してもらい,感想や意見などを集計した.学生の課題より,写真測量が得意とする対象物の例として物体の色が均一でないもの,形状がはっきりしているもの,被写体が動かないものなどが挙がった.また,3Dモデルの完成度を高めるために,あらゆる角度からの写真撮影が必要であること,カメラと対象物との距離を考慮すること,などの指摘が挙がった.これらは,一般的に写真測量の基本的な計画として述べられている事項であり,学生たちは体系的に写真測量に関する技能を身に着けることができると推察できた.