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[G01-P02] 地理院地図Globe用裸眼立体視アプリケーションの地球科学教育への応用 ーオリジナル動画とソーシャルメディアコンテンツの利用を中心にー
キーワード:ドラッグ アンド ドロップ、立体視、動画、視覚教材、VR、DX
1. はじめに
回転または移動する対象を撮影し,または,回転または移動しながら撮影した通常の単一映像を利用してこれらを立体視する技法が提案され(領木(2019a, 2019b, 2019c)),これをDX時代の職業訓練に展開応用する方向性が示された(領木・他(2022)).ここでは,高校での地学教育や大学等での関連専門教育でのこの技法による教材呈示法について報告する.
2. 立体視ビューワーSVdの概要
回転体を撮影した通常の映像をわずかな時間間隔をあけて左右に並べて再生し,左右個々の目で見れば立体視できる(領木(2019a)).このアプリケーションStereoscopic Video (SVd)がWWW上に公開されている(領木(2021, 2022a)).このビューアーでは上記の条件を満たすPC内のビデオファイルのほか,現在普遍的となったソーシャルメディアの一つであるYou Tube (2022)で提供されるVR用を含む上記条件の映像も立体視できる(図1).
SVdでは,再生映像の回転角が調整でき,任意の方位に進行して撮影撮影された映像でも水平移動するものとして閲覧できる.領木(2022a)で示されたように,SVdでは二次元バーコードの読み取りによる閲覧もできる.今回,YouTubeコンテンツやmp4等のローカルファイルをdrag & dropで閲覧する機能(図2,図3)を付加したため,教育の場で使用する際の利便性が向上した.SVdの画面は回転させることができるので,上下に動く映像は適宜回転させれば立体視が可能になる(領木・他, 2022).
3.地図コンテンツの利用
地球科学や地理学,土木工学,建築学の教育では,地図やその上に表現される自然風物・人工構造物を教材とする場面が多い.このうち,地図コンテンツとして地理院地図Globe (国土地理院, 2017)を用いると,従来の航空写真を使用した立体視教材と同様に扱うことができる(領木, 2019).地理院地図Globeには,基図となる地形図上に他機関が作成した各種の地理情報が上載せできるので,色々な分野の教材として利用できる.また,例えばフリーのオープンソースプログラムであるQGIS(QGISプロジェクト, 2023)などの地理情報編集ツールと連動させることによって独自の教材を作成することも可能である.
地理院地図Globeを立体視のために利用する場合は領木(2019a)が作成したStereoscopic Viewer (SVw)を使用すると便利である(図4).SVdと同様に,SVwもそのURLに表示させたい地理院地図GlobeのURLをパラメータとして付記することができる.付記する地理院地図GlobeのURLには描画する際の諸条件の指定が含まれたものが使用できる.また,SVwのURLもパラメータを含めて二次元バーコードとして表示すればPC等で簡単に閲覧可能である.
SVwで地図を鳥瞰するときは,Karney(2013)が提案したアルゴリズムによって算出した視点の緯経度を表示できるようにした.
SVw内で作成した地理座標および描画のための瞳孔位置等の設定値を利用して,二つの並列するWWWブラウザにGoogleMap(Google LLC, 2005)のStreet viewまたはGoogleEarth(Google LLC, 2017)を描画させれば,これらの立体視が可能である.
4.若年者に対する利用上の問題点
立体視は左右の目が個別の映像を知覚した際に脳内で双方の映像が高次の画像処理を施されることによって立体として認識される(田辺・藤田(2004),広内(2013).これらの知見から考察すると,脳内処理系が充分に発達していない年少者がここで述べたような技法で2つの平面図を左右個別の目で見て立体感を得ることを頻繁に繰り返してしまえば,彼らの自然な脳内処理系の発達を阻害させる可能性が否定できない.目視による立体感の獲得経緯については今後の知見によって明らかにされてゆく必要があるものの,現段階ではこのような脳内処理がすでに定着していると思われる成人(18歳)程度以上の年齢層を対象に裸眼立体視の技能訓練を行うことが適切であり,少なくとも高等学校以降の教育の場で活用することが望ましいと考えられる.
参考文献
Google LLC(2005):Google Map, https://www.google.co.jp/maps/(2023.2.15.閲覧)
Google LLC(2017):Web版Google Earth, https://earth.google.com/web/(2023.2.15.閲覧)
広島県(2023):「ひろしま自然災害体験VR」について,みんなで減災推進課,危機管理監,https://www.pref.hiroshima.lg.jp/soshiki/249/dosyasaigai-vr.html (2023.2.25.閲覧)
広内哲夫(2013):立体視の原理と3D技術への応用,情報システム学会誌,8, 2, 5-16.
Homemade Espresso(2022): アイスランド上空を飛ぶ, https://www.youtube.com/watch?v=7RAEl5GaeO8 (2023.2.15.閲覧)
地震調査研究推進本部(2021):全国の主要活断層帯, https://gbank.gsj.jp/activefault/ (2023.2.15.閲覧)
Karney, C. (2013): Algorithms for Geodesics, J. Geod. 87, p.43-55.
国土地理院(2017):地理院地図Globeの正式公開,http://www.gsi.go.jp/common/000185126.pdf (2023.2.15.閲覧).
QGISプロジェクト(2023): QGISについて,https://www.qgis.org/ja/site/about/index.html (2023.2.15,閲覧)
領木邦浩(2019a):地理院地図Globeを利用したシームレス地理情報ステレオビュワー,日本情報地質学会講演会講演要旨集,30, 31-32.
領木邦浩(2019b):地理情報ステレオビュアーによる地理院地図Globeの立体視,地理院地図パートナーネットワーク会議資料,11, 15, https://maps.gsi.go.jp/pn/meeting_partners/data/20191128/15.pdf (2023.2.15.閲覧).
領木邦浩(2019c):回転映像を用いた立体視ビュアーの構築 -教育訓練の展開と実務への応用-,職業能力開発研究発表講演会講演論文集, 27, 30-J-5.
領木邦浩(2021):Stereoscopic Viewer Ver. 2.0, http://moon2.gmobb.jp/higgs_ryoki/StereoscopicViewer/html/index4gmobb_withGoogleMaps.html (2023.2.15.閲覧)
領木邦浩(2022a):Stereoscopic Video, http://moon2.gmobb.jp/higgs_ryoki/StereoscopicViewer/html/stereoscopic_video.html (2023.2.15.閲覧)
領木邦浩,宮里裕二,相澤啓仁,川田吉弘,寺田憲司,渡邊一弘(2022):教育訓練における裸眼立体視用ビュアーによる3D動画の活用,職業能力開発研究発表講演会講演論文集, 30, 26-B-4.
YouTube(2023):YouTubeの取り組み,YouTubeのしくみとは?,https://www.youtube.com/intl/ALL_jp/howyoutubeworks/ (2023.2.15.閲覧).
回転または移動する対象を撮影し,または,回転または移動しながら撮影した通常の単一映像を利用してこれらを立体視する技法が提案され(領木(2019a, 2019b, 2019c)),これをDX時代の職業訓練に展開応用する方向性が示された(領木・他(2022)).ここでは,高校での地学教育や大学等での関連専門教育でのこの技法による教材呈示法について報告する.
2. 立体視ビューワーSVdの概要
回転体を撮影した通常の映像をわずかな時間間隔をあけて左右に並べて再生し,左右個々の目で見れば立体視できる(領木(2019a)).このアプリケーションStereoscopic Video (SVd)がWWW上に公開されている(領木(2021, 2022a)).このビューアーでは上記の条件を満たすPC内のビデオファイルのほか,現在普遍的となったソーシャルメディアの一つであるYou Tube (2022)で提供されるVR用を含む上記条件の映像も立体視できる(図1).
SVdでは,再生映像の回転角が調整でき,任意の方位に進行して撮影撮影された映像でも水平移動するものとして閲覧できる.領木(2022a)で示されたように,SVdでは二次元バーコードの読み取りによる閲覧もできる.今回,YouTubeコンテンツやmp4等のローカルファイルをdrag & dropで閲覧する機能(図2,図3)を付加したため,教育の場で使用する際の利便性が向上した.SVdの画面は回転させることができるので,上下に動く映像は適宜回転させれば立体視が可能になる(領木・他, 2022).
3.地図コンテンツの利用
地球科学や地理学,土木工学,建築学の教育では,地図やその上に表現される自然風物・人工構造物を教材とする場面が多い.このうち,地図コンテンツとして地理院地図Globe (国土地理院, 2017)を用いると,従来の航空写真を使用した立体視教材と同様に扱うことができる(領木, 2019).地理院地図Globeには,基図となる地形図上に他機関が作成した各種の地理情報が上載せできるので,色々な分野の教材として利用できる.また,例えばフリーのオープンソースプログラムであるQGIS(QGISプロジェクト, 2023)などの地理情報編集ツールと連動させることによって独自の教材を作成することも可能である.
地理院地図Globeを立体視のために利用する場合は領木(2019a)が作成したStereoscopic Viewer (SVw)を使用すると便利である(図4).SVdと同様に,SVwもそのURLに表示させたい地理院地図GlobeのURLをパラメータとして付記することができる.付記する地理院地図GlobeのURLには描画する際の諸条件の指定が含まれたものが使用できる.また,SVwのURLもパラメータを含めて二次元バーコードとして表示すればPC等で簡単に閲覧可能である.
SVwで地図を鳥瞰するときは,Karney(2013)が提案したアルゴリズムによって算出した視点の緯経度を表示できるようにした.
SVw内で作成した地理座標および描画のための瞳孔位置等の設定値を利用して,二つの並列するWWWブラウザにGoogleMap(Google LLC, 2005)のStreet viewまたはGoogleEarth(Google LLC, 2017)を描画させれば,これらの立体視が可能である.
4.若年者に対する利用上の問題点
立体視は左右の目が個別の映像を知覚した際に脳内で双方の映像が高次の画像処理を施されることによって立体として認識される(田辺・藤田(2004),広内(2013).これらの知見から考察すると,脳内処理系が充分に発達していない年少者がここで述べたような技法で2つの平面図を左右個別の目で見て立体感を得ることを頻繁に繰り返してしまえば,彼らの自然な脳内処理系の発達を阻害させる可能性が否定できない.目視による立体感の獲得経緯については今後の知見によって明らかにされてゆく必要があるものの,現段階ではこのような脳内処理がすでに定着していると思われる成人(18歳)程度以上の年齢層を対象に裸眼立体視の技能訓練を行うことが適切であり,少なくとも高等学校以降の教育の場で活用することが望ましいと考えられる.
参考文献
Google LLC(2005):Google Map, https://www.google.co.jp/maps/(2023.2.15.閲覧)
Google LLC(2017):Web版Google Earth, https://earth.google.com/web/(2023.2.15.閲覧)
広島県(2023):「ひろしま自然災害体験VR」について,みんなで減災推進課,危機管理監,https://www.pref.hiroshima.lg.jp/soshiki/249/dosyasaigai-vr.html (2023.2.25.閲覧)
広内哲夫(2013):立体視の原理と3D技術への応用,情報システム学会誌,8, 2, 5-16.
Homemade Espresso(2022): アイスランド上空を飛ぶ, https://www.youtube.com/watch?v=7RAEl5GaeO8 (2023.2.15.閲覧)
地震調査研究推進本部(2021):全国の主要活断層帯, https://gbank.gsj.jp/activefault/ (2023.2.15.閲覧)
Karney, C. (2013): Algorithms for Geodesics, J. Geod. 87, p.43-55.
国土地理院(2017):地理院地図Globeの正式公開,http://www.gsi.go.jp/common/000185126.pdf (2023.2.15.閲覧).
QGISプロジェクト(2023): QGISについて,https://www.qgis.org/ja/site/about/index.html (2023.2.15,閲覧)
領木邦浩(2019a):地理院地図Globeを利用したシームレス地理情報ステレオビュワー,日本情報地質学会講演会講演要旨集,30, 31-32.
領木邦浩(2019b):地理情報ステレオビュアーによる地理院地図Globeの立体視,地理院地図パートナーネットワーク会議資料,11, 15, https://maps.gsi.go.jp/pn/meeting_partners/data/20191128/15.pdf (2023.2.15.閲覧).
領木邦浩(2019c):回転映像を用いた立体視ビュアーの構築 -教育訓練の展開と実務への応用-,職業能力開発研究発表講演会講演論文集, 27, 30-J-5.
領木邦浩(2021):Stereoscopic Viewer Ver. 2.0, http://moon2.gmobb.jp/higgs_ryoki/StereoscopicViewer/html/index4gmobb_withGoogleMaps.html (2023.2.15.閲覧)
領木邦浩(2022a):Stereoscopic Video, http://moon2.gmobb.jp/higgs_ryoki/StereoscopicViewer/html/stereoscopic_video.html (2023.2.15.閲覧)
領木邦浩,宮里裕二,相澤啓仁,川田吉弘,寺田憲司,渡邊一弘(2022):教育訓練における裸眼立体視用ビュアーによる3D動画の活用,職業能力開発研究発表講演会講演論文集, 30, 26-B-4.
YouTube(2023):YouTubeの取り組み,YouTubeのしくみとは?,https://www.youtube.com/intl/ALL_jp/howyoutubeworks/ (2023.2.15.閲覧).