日本地球惑星科学連合2023年大会

講演情報

[J] オンラインポスター発表

セッション記号 G (教育・アウトリーチ) » 教育・アウトリーチ

[G-02] 総合的防災教育

2023年5月21日(日) 09:00 〜 10:30 オンラインポスターZoom会場 (1) (オンラインポスター)

コンビーナ:林 信太郎宇根 寛中井 仁(小淵沢総合研究施設)、小森 次郎(帝京平成大学)

現地ポスター発表開催日時 (2023/5/21 17:15-18:45)

09:00 〜 10:30

[G02-P06] 実効的な避難訓練の開発 −実動訓練の効果と課題−

*大倉 加子1、岡崎 竜也3、藤原 友宜2大木 聖子2 (1.慶應義塾大学大学院 政策・メディア研究科、2.慶應義塾大学 環境情報学部、3.慶應義塾大学 総合政策学部)

キーワード:地震、避難訓練、実動訓練、学校安全

本研究では、小中学校で現在行われている避難訓練の課題を整理し、より実効的な避難訓練のあり方を実践例を示しつつ報告する。

現行の避難訓練:
全員が揃っている授業時間中に発災を伝える校内放送があり、教員の指示に従って机の下に隠れる。その後、再び校内放送が流れ「落ち着いて整列し、校庭に集合」の旨が伝えられる。全校生徒で時間を競いながら、階段を早足で駆け降りて校庭に集合、教員による点呼が終わるまでの時間を校長が計測し、かかった時間や真剣な態度だったか等についての評価が行われる。校庭に集合する前提であるため、雨天の場合は中止して後日に延期するのが通例である。



過去の地震災害で実際に起きたこととの矛盾:
学校管理下に発生した過去の災害では、過呼吸になる児童生徒や、腰が抜けて動けなくなった児童、立て続く余震による恐怖で嘔吐をする児童などが生じており、階段の転落も年齢に関係なく発生している。しかし、学校での避難訓練では、これらの過去に学校で実際に起きた事象はまったくないものとして運営されている。高確率で発生する停電や、地震学的に必ず発生する余震は、起きないことになっている。したがって、校庭へと競って向かう渦中に階段で余震が発生して転落することもなく、教職員が意思の疎通に苦労することもない。校庭への集合が目的化し、それに不都合な事実はすべて排除しているような状況にあると言える。



実動訓練の導入:
そこで、実際の校舎を使って、その学校に勤務する教職員が、発災時にどのような動きをするのがいいかを検証するための実動訓練を行った。過去に起きたけがや過呼吸の児童生徒などは研究室の大学生が再現し、教職員はそれらを自校の児童・生徒と思って対処にあたる。その結果、1)保健室への搬送基準の策定,2)引き渡しのあり方の見直し,3)停電時の情報伝達のあり方に課題が見つかった。保健室への搬送基準の策定については災害医療従事者などの専門的知見が必要であるため、筆者らが作成して提供したが、引き渡しや情報共有のあり方については校種や立地、校舎の構造によって異なるため、各学校で見直す必要がある。



実動訓練後の学校の混乱:
このような実動訓練を東京都・神奈川県・埼玉県の複数の小中学校で実施し、学校の防災体制にどのような改善をもたらすのか分析・考察を行った。その結果、実動訓練は参加したすべての教職員に防災意識の変革をもたらすが、そのことがかえって「課題が山積みであることが明確になり、何から手を付けていいか分からない混乱状況」をもたらしていることが明らかになった。

本発表では、このような状況からの脱却を果たした学校との協働実践について、教材開発や児童生徒を交えたより実効的な訓練の実施とその効果について報告する。