日本地球惑星科学連合2023年大会

講演情報

[J] オンラインポスター発表

セッション記号 G (教育・アウトリーチ) » 教育・アウトリーチ

[G-02] 総合的防災教育

2023年5月21日(日) 09:00 〜 10:30 オンラインポスターZoom会場 (1) (オンラインポスター)

コンビーナ:林 信太郎宇根 寛中井 仁(小淵沢総合研究施設)、小森 次郎(帝京平成大学)

現地ポスター発表開催日時 (2023/5/21 17:15-18:45)

09:00 〜 10:30

[G02-P09] ハザードマップの想定災害の相対性に関する防災教育ー火山災害を例にして

*林 信太郎1 (1.秋田大学大学院教育学研究科)

キーワード:ハザードマップ、噴火、想定災害


自然災害にはさまざまな規模のものがある。火山災害の場合,大規模な噴火は広範囲に影響を及ぼし,小規模な噴火は限定的な影響しか及ぼさない。このような災害規模の大きさのスペクトラムのどこかには,想定噴火をおかなければならない。そうしなければ,ハザードマップを作れないからである。
想定噴火を決めることはたいへんむずかしい。想定噴火を小さくし過ぎると想定からはずれた噴火が発生する可能性が高まり,大きな人的被害が出る可能性がある。想定噴火を大きくし過ぎると空振りの警戒避難が多くなり,地域経済および避難者の生活に大きなダメージを生じる。どうやって,住民の生命を守りつつ,地域経済へのダメージを小さくするか?このジレンマは,噴火ハザードマップ作成にいつもつきまとう。これは答えのない難しい問題である。
筆者はこれまで,いくつかの火山のハザードマップ作成に関わってきた。講演ではその経験に基づいて,想定噴火がどうやって決められてきたのか述べていきたい。
いずれにしろ,想定噴火はある特定の大きさのものであり,相対的なものである。それによって書かれたハザードマップも目安程度のものでしかない。このことを知らないと,ハザードマップに描かれた境界線を絶対視してしまうことになり,防災上非常に問題がある。
防災教育にあたっては,ハザードマップの想定災害が相対的なものということ,さらに想定災害について作成されたハザードの範囲も相対的なものということを理解することが重要である。そのためには,災害の大きさのスペクトラムを知ることが前提になる。
現行の地理総合の教科書の防災に関する記述は,たいへん充実している。しかしながら,ハザードマップの想定外の災害については,チェックした5社の教科書のうち,1社の教科書だけが言及している。また,災害の大きさのスペクトラムに関する言及は発見できていない。
現行の地学基礎の教科書では,ハザードマップの想定外の災害については,チェックした5社の教科書のうち3社の教科書が言及している。災害の大きさのスペクトラムについては,地学基礎の非常に注意深い学習者ならば読み取ることができそうである。
ハザードマップの正しい理解は防災の基盤である。地理総合と地学基礎を共に学び,学習方法を工夫すればハザードマップを正しく理解させるための防災教育が実施可能であろう。