14:45 〜 15:00
[G03-05] 宇宙生物学への道、高等学校における「探究型授業」の試み
キーワード:二酸化炭素濃度、探究型事業、土中微生物
現在高等学校では文科省の強い指導のもと、「探究型授業」の導入が進められており、様々な試みが行われてきている.著しい成果があがり今後の教育の変革を予感させるものがある一方、型式だけの導入に留まり、従来の指導型授業と変わりない取り組みも多い.適切な題材探しに苦労しているという現場の声もよく耳にする.本発表では「探究型授業」を行う上での考慮すべき要点・問題点を整理し、教材選択上の満たすべき条件や実現可能性をあげ、それらの実践例として二酸化炭素濃度計を用いた講義を紹介する.
科学分野の探究型授業を担当する教員の至福の時、醍醐味は生徒が自ら抱いた好奇心に基づき実験や解析を行い、何らかの結果を得たときに見せる驚きや笑顔に接するときであろう.これは一種の麻薬のようなものであり、一度このような笑顔を見てしまうと、次はもっと!、と更なる改善点を考えてしまう.実はここに大きな矛盾点が存在している.教員が改善をめざして周到に準備をすればするほど「探究型授業」から離れて行ってしまうのではないだろうか? 純粋に研究に邁進する場ではない高校教育において「探究型授業」の持っている本質的な矛盾点と言えよう.用意周到な準備は生徒の自律的な思考を阻害することがある。この解決には教員が全て見通した講義プランを立てない事、講義・実験において不確定さの余地を残しておくことが必要である.ここでは実験的な教材に絞って満たすべき条件を以下にまとめる;
1:実験のテーマには複数の意義を持たせること:生徒が選択できる余地を残すこと。講義の進行に大きな不確定さを残すことになるが、「選択のための思考」は重要な授業構成要素である。
2:簡単な、安価な実験器具の準備:この講義で刺激を受けた生徒が放課後・家庭などで展開実験を行えるようなものが望ましい。これは著者が過去のJPGUのセッション:キッチン地球科学において繰り返し主張してきた点である。
3:インターネット環境の整備:効率的な学習効果をあげるために不可欠な環境である。また情報リテラシーの学習の良い機会となる。
一つの例として我々が取り組んだ講義を簡単に紹介する。具体的な使用材料は学会時に表示する。
テーマ:宇宙生物学への道、二酸化炭素センサーを用いた探究実験
実験は3日(1回3時間程度)、20人の生徒を対象(4人づつのグループ5班)、使用機材:各グループ毎に二酸化炭素センサー(RATOC社製RS-BTEVS1)、プラスチックのコンテナー容器、スマホ用バッテリ
第1回:センサーになれる:
入門講義:二酸化炭素とは何か? 地球環境での役割、生物にとっての意義、標準体積やppmの説明
実験1:窓を開けた教室の濃度測定 教室内に存在している二酸化炭素分子の数を見積もってみよう
実験2:窓を閉めて、生徒が静かに生物の問題を10分間解く。
実験3:窓を閉めて、生徒が音楽に合わせてダンスのエクササイズを10分間行う。
これらの計測値の比較から生物にとっての呼吸作用を理解する。
第2回:土から出てくる二酸化炭素を測ろう:実験4:5種類のサンプルを用意し各班毎にシールされた容器内の濃度の時間変化を測る。サンプル:腐葉土、砂、電子レンジで30秒処理した腐葉土、紫外線殺菌灯で10分間照射した腐葉土、保冷剤で冷やしている腐葉土、30分間の待機時間中に呼吸作用の生物学の補足講義を行う。途中経過を報告させ、計測値の比較、違いの議論を行う。実験5:それぞれに砂糖水を加え、濃度の時間変化を観察する。砂糖水は土中細菌などの栄養素として働くために濃度は大きく増加する。生徒と二酸化炭素の増加の原因を議論する。この実験はカール・セーガンがバイキング計画で火星の生命の検出に用いた実験と同じものである。この説明を通して宇宙生物学に結びつく実験であることを説明する。さて我々の実験で本当に土中微生物の活動によって二酸化炭素がでていたのか?、それを確認するにはどうすればよいのか? これが最後の質問。第3回の実験ではそれぞれの班で議論したアイデアに基づいた実験の計画を立てることを
第3回:果たしてどのようなアイデアが出てきて、どのような実験が行われたのか? 詳細は5月の学会時に。
科学分野の探究型授業を担当する教員の至福の時、醍醐味は生徒が自ら抱いた好奇心に基づき実験や解析を行い、何らかの結果を得たときに見せる驚きや笑顔に接するときであろう.これは一種の麻薬のようなものであり、一度このような笑顔を見てしまうと、次はもっと!、と更なる改善点を考えてしまう.実はここに大きな矛盾点が存在している.教員が改善をめざして周到に準備をすればするほど「探究型授業」から離れて行ってしまうのではないだろうか? 純粋に研究に邁進する場ではない高校教育において「探究型授業」の持っている本質的な矛盾点と言えよう.用意周到な準備は生徒の自律的な思考を阻害することがある。この解決には教員が全て見通した講義プランを立てない事、講義・実験において不確定さの余地を残しておくことが必要である.ここでは実験的な教材に絞って満たすべき条件を以下にまとめる;
1:実験のテーマには複数の意義を持たせること:生徒が選択できる余地を残すこと。講義の進行に大きな不確定さを残すことになるが、「選択のための思考」は重要な授業構成要素である。
2:簡単な、安価な実験器具の準備:この講義で刺激を受けた生徒が放課後・家庭などで展開実験を行えるようなものが望ましい。これは著者が過去のJPGUのセッション:キッチン地球科学において繰り返し主張してきた点である。
3:インターネット環境の整備:効率的な学習効果をあげるために不可欠な環境である。また情報リテラシーの学習の良い機会となる。
一つの例として我々が取り組んだ講義を簡単に紹介する。具体的な使用材料は学会時に表示する。
テーマ:宇宙生物学への道、二酸化炭素センサーを用いた探究実験
実験は3日(1回3時間程度)、20人の生徒を対象(4人づつのグループ5班)、使用機材:各グループ毎に二酸化炭素センサー(RATOC社製RS-BTEVS1)、プラスチックのコンテナー容器、スマホ用バッテリ
第1回:センサーになれる:
入門講義:二酸化炭素とは何か? 地球環境での役割、生物にとっての意義、標準体積やppmの説明
実験1:窓を開けた教室の濃度測定 教室内に存在している二酸化炭素分子の数を見積もってみよう
実験2:窓を閉めて、生徒が静かに生物の問題を10分間解く。
実験3:窓を閉めて、生徒が音楽に合わせてダンスのエクササイズを10分間行う。
これらの計測値の比較から生物にとっての呼吸作用を理解する。
第2回:土から出てくる二酸化炭素を測ろう:実験4:5種類のサンプルを用意し各班毎にシールされた容器内の濃度の時間変化を測る。サンプル:腐葉土、砂、電子レンジで30秒処理した腐葉土、紫外線殺菌灯で10分間照射した腐葉土、保冷剤で冷やしている腐葉土、30分間の待機時間中に呼吸作用の生物学の補足講義を行う。途中経過を報告させ、計測値の比較、違いの議論を行う。実験5:それぞれに砂糖水を加え、濃度の時間変化を観察する。砂糖水は土中細菌などの栄養素として働くために濃度は大きく増加する。生徒と二酸化炭素の増加の原因を議論する。この実験はカール・セーガンがバイキング計画で火星の生命の検出に用いた実験と同じものである。この説明を通して宇宙生物学に結びつく実験であることを説明する。さて我々の実験で本当に土中微生物の活動によって二酸化炭素がでていたのか?、それを確認するにはどうすればよいのか? これが最後の質問。第3回の実験ではそれぞれの班で議論したアイデアに基づいた実験の計画を立てることを
第3回:果たしてどのようなアイデアが出てきて、どのような実験が行われたのか? 詳細は5月の学会時に。