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[HCG21-10] 福島県阿武隈山地のコナラ林における森林内セシウム137移行量の推定
キーワード:東京電力福島第一原子力発電所事故、森林、放射性セシウム
東京電力ホールディングス福島第一原子力発電所(以下、1F)の事故に由来する放射性物質のうち、137Cs(以下、Cs)は半減期が約30年と長いことから、今後長期にわたり分布状況をモニタリングし、その影響を注視していく必要がある。林外へのCs流出率は年間0.1%台であり、森林は長期にCsを林内に留める機能を有する。このため、森林内を循環し移行するCs動態の解明は、将来的な林産物の濃度予測の基礎となる。本研究では、福島県阿武隈山地の複数林分にて実施した森林樹冠から森林林床へのCs移行量に関する結果を報告する。
阿武隈山地の生活圏に隣接するコナラ林において、年間降雨量や樹木密度がほぼ同様であるものの、1Fに対する方位と初期沈着量の異なる3林分を選定し、2021年4月から11月期にかけて、リターフォール、樹幹流及び林内雨に伴うCs移動量の観測を実施した。各林分は、1Fから北西約34 kmで初期沈着量が約433 kBq m-2の1林分(Saka地点)、1Fから西北西約23 kmで初期沈着量が約257 kBq m-2および約92 kBq m-2の2林分(MJNおよびMJS地点)である。各移行経路に沿うCs移行量は、リター乾燥重量、樹幹流量および林内雨量に各試料のCs濃度を乗ずることで算出した。
各移行経路に沿うCs移行量の割合を3林分で比較した結果、初期沈着量が比較的高いSaka地点では、林内雨、樹幹流およびリターフォールに伴う移行割合は、移行量全体のそれぞれ約44%、11%および45%程度であった。一方、初期沈着量が比較的低いMJS地点では、林内雨、樹幹流およびリターフォールに伴う移行割合は、移行量全体のそれぞれ約58%、10%および32%程度であった。すなわち、初期沈着量が低いほど、流水に伴うCsの移行割合が高い結果となった。
調査した3林分における降雨量、樹木密度および樹種といった地理的条件はほぼ同一であることから、異なる林分で見られた移行経路に沿う移行割合の差異は、Csの初期沈着量および1Fに対する方位の差異、すなわちCsの森林内における初期沈着状況や森林内におけるCsの存在形態が異なる可能性を示唆する。今後、樹木へのCs吸収量を算出し、森林内におけるCs循環量の比較検討を進める予定である。
阿武隈山地の生活圏に隣接するコナラ林において、年間降雨量や樹木密度がほぼ同様であるものの、1Fに対する方位と初期沈着量の異なる3林分を選定し、2021年4月から11月期にかけて、リターフォール、樹幹流及び林内雨に伴うCs移動量の観測を実施した。各林分は、1Fから北西約34 kmで初期沈着量が約433 kBq m-2の1林分(Saka地点)、1Fから西北西約23 kmで初期沈着量が約257 kBq m-2および約92 kBq m-2の2林分(MJNおよびMJS地点)である。各移行経路に沿うCs移行量は、リター乾燥重量、樹幹流量および林内雨量に各試料のCs濃度を乗ずることで算出した。
各移行経路に沿うCs移行量の割合を3林分で比較した結果、初期沈着量が比較的高いSaka地点では、林内雨、樹幹流およびリターフォールに伴う移行割合は、移行量全体のそれぞれ約44%、11%および45%程度であった。一方、初期沈着量が比較的低いMJS地点では、林内雨、樹幹流およびリターフォールに伴う移行割合は、移行量全体のそれぞれ約58%、10%および32%程度であった。すなわち、初期沈着量が低いほど、流水に伴うCsの移行割合が高い結果となった。
調査した3林分における降雨量、樹木密度および樹種といった地理的条件はほぼ同一であることから、異なる林分で見られた移行経路に沿う移行割合の差異は、Csの初期沈着量および1Fに対する方位の差異、すなわちCsの森林内における初期沈着状況や森林内におけるCsの存在形態が異なる可能性を示唆する。今後、樹木へのCs吸収量を算出し、森林内におけるCs循環量の比較検討を進める予定である。