日本地球惑星科学連合2023年大会

講演情報

[J] オンラインポスター発表

セッション記号 H (地球人間圏科学) » H-CG 地球人間圏科学複合領域・一般

[H-CG21] 原子力と地球惑星科学

2023年5月26日(金) 13:45 〜 15:15 オンラインポスターZoom会場 (3) (オンラインポスター)

コンビーナ:竹内 真司(日本大学文理学部地球科学科)、濱田 崇臣((一財)電力中央研究所)、笹尾 英嗣(国立研究開発法人日本原子力研究開発機構 東濃地科学センター)

現地ポスター発表開催日時 (2023/5/25 17:15-18:45)

13:45 〜 15:15

[HCG21-P04] 高レベル放射性廃棄物等の処分地選定に係るボーリング調査技術の実証研究(5)深部地下環境の微生物調査における掘削泥水の影響

*長岡 亨1、平野 伸一1、栗田 宗大1 (1.一般財団法人 電力中央研究所)

キーワード:地下深部、微生物群集、ボーリング掘削、掘削泥水、コンタミネーション

1. はじめに
地下環境には多種多様な微生物が生息し、放射性核種の地下水中の移行挙動や金属製オーバーパックの腐食など、処分システムに及ぼす多岐にわたる微生物の影響が指摘されている1)。そのため、微生物影響を加味した定量的な安全評価手法の早期確立が望まれている。微生物影響を評価するためには、処分環境となる地下深部の微生物生態を明らかにすることが重要であり、処分地選定に係る概要調査におけるボーリング調査では、微生物調査が調査項目の一つとなる可能性がある。そこで、微生物影響評価の基礎データとなる地下深部の微生物の種類・量を把握することを目的に、電力中央研究所と原子力発電環境整備機構の「実証研究」として当所横須賀地区で実施した大深度ボーリング実証試験において、ほぼ同深度で採取した岩石コア(深度695 m、葉山層群泥岩)と地下水、加えて掘削に用いた泥水について、既存の分析手法(全菌数・生菌数測定、機能遺伝子の定量、16S rRNA遺伝子を対象としたアンプリコンシーケンス解析)を適用し、試料中に含まれる微生物の分析を行った。

2. 検討結果
岩石コア、地下水および掘削泥水の分析結果を比較することで、ボーリング掘削による微生物調査に対する掘削泥水の影響を評価した結果、掘削泥水などによる岩石コアや地下水へのクロスコンタミネーションを完全に防ぐのは困難であることが明らかとなった。特に培養法による生菌数測定では、高アルカリ性掘削泥水などによる生育阻害の影響を大きく受けることが示唆された。一方、遺伝子解析などによって、地下深部の微生物生態をある程度把握することは可能であることが分かった。今後、最新手法の適用可能性や新規手法の開発を進めるとともに、処分システムにおける微生物影響の定量的な評価手法の構築が望まれる。

文献
1)Lloyd and Cherkouk (2021): The microbiology of nuclear waste disposal, Elsevier inc.