日本地球惑星科学連合2023年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 H (地球人間圏科学) » H-CG 地球人間圏科学複合領域・一般

[H-CG22] 堆積・侵食・地形発達プロセスから読み取る地球表層環境変動

2023年5月22日(月) 13:45 〜 15:00 201B (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:清家 弘治(産業技術総合研究所・地質調査総合センター)、池田 昌之(東京大学)、菊地 一輝(京都大学大学院 理学研究科 地球惑星科学専攻)、高柳 栄子(東北大学大学院理学研究科地学専攻)、座長:池田 昌之(東京大学)、菊地 一輝(京都大学大学院 理学研究科 地球惑星科学専攻)、清家 弘治(産業技術総合研究所・地質調査総合センター)

14:15 〜 14:30

[HCG22-03] 駿河湾北部富士川河口沖で確認された海底設置型混濁流観測装置(TCD)の海底移動

*馬塲 久紀1中尾 凪佐2坂本 泉1阿部 信太郎3大上 隆史4横山 由香1中村 希5、渡邊 聡士6、松田 滋夫7平 朝彦8 (1.東海大学海洋学部海洋理工学科、2.東海大学大学院総合理工学研究科、3.地震予知総合研究振興会、4.産業総合技術研究所、5.東海大学大学院海洋学研究科、6.東海大学海洋学部海洋地球科学科、7.クローバテック株式会社、8.東海大学海洋研究所)

キーワード:混濁流、富士川、台風起源、駿河湾

2018年10月に駿河湾北部富士川河口沖海底扇状地で「富士川河口断層帯における重点的な調査観測」プロジェクトによる地下構造探査が実施された(文科省・東大地震研,2020).この探査では,自己浮上式海底地震計(OBS)を18台設置した.設置後、18台のうち7台が,投入位置より南方向に移動する,近隣の海岸に漂着する等の異常が発生した.この原因は2018年台風24号によって混濁流が発生したことにあると馬塲ほか(2021)では示唆されている.
本研究では,駿河湾で台風を起源とした混濁流を調査・観測するために,自己浮上式海底設置型混濁流観測装置(TCD:Turbidity Current Detector)を試作し,2021年(1回目)および2022年(2回目)の台風が多く発生する8月~11月に富士川河口沖海底扇状地の水深1312mの海底に投入・設置した.TCDには,OBSで使用されるガラス球の中にカメラ・ライト・IMU(IMU:Inertial Measurement Unit(慣性計測ユニット))を装備し,混濁流の画像やTCDが流された場合にその移動経過が記録できるような工夫がされている.
2022年9月に台風14号・15号が連続して駿河湾に接近し,特に台風15号では駿河湾北部の静岡市清水区で大規模な断水が発生するなど大きな影響をもたらした.台風通過後,駿河湾の海況が落ちつくのを待って,TCDの当初設置位置の海上にて位置確認のため音響通信を試みたところ,TCDは設置位置から富士川延長線上南側方向へ約2.8 km(水深1421m)移動していることが判明した.その後,切り離し指令信号を送ることによって浮上・回収を試みたが,正常な応答はあるものの浮上はせず回収ができなかった.そのため,2022年12月25日にROV(ROV: Remotely Operated Vehicle(遠隔操作型無人探査機))を用いてTCDの海底捜索を行ったところ,多くの泥と陸性のものと思われる植物が絡みつき,自己浮上ができない状態で発見,ROVのマニピュレータにて回収を行った.回収後,内部データを確認したが,内部機器は多大なダメージを受けていることから,データ解析はできない状態であった.
本発表では,TCDの設置から回収に至る時系列の経過について,TCD回収後の泥の付着状況・アンカーの変形状況・TCDが移動するためにかかると考えられる力学的エネルギーの状況等の詳細について報告する.なお,本発表に関連して,ROV潜航により判明した富士川沖の海底堆積環境(ポスター発表:中村ほか,セッションID,H-CG22,5/22PM),またTCD観測システム詳細について(ポスター発表:中尾ほか,セッションID,M-IS07,5/23PM)の発表も行う.

謝辞
TCD回収には,ROVの母船「第一開洋丸(1390トン)」の乗組員とROVオペレーターの方々,また海洋エンジニアリング(株)鬼頭毅社長にはお世話になりました.心よりお礼申し上げます.

参考文献
文部科学省研究開発局・東京大学地震研究所(2020)富士川河口断層帯における重点的な調査観測 平成29〜令和2年度 成果報告書.
馬塲久紀,中尾凪佐,西宮隆仁,篠原雅尚,阿部信太郎,鶴我佳代子(2021),海底地震計記録に捉えられた台風24号の通過に伴う駿河湾北部の混濁流,地震,73,197-207.