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[HCG22-07] 白亜紀の深海チャートから読み解く低緯度陸域環境変動
キーワード:白亜紀、海洋無酸素事変、洪水堆積物
海洋無酸素事変(OAE)では、大規模火成活動に伴い、大気pCO2が増加して温暖化し、大陸風化が促進して海洋が富栄養化し、貧酸素化したと考えられている。しかし、大陸風化のほとんどを担う低緯度の陸域環境が、OAE時期にどのように変化したかは未解明である。本研究では、太平洋低緯度域に堆積した四万十帯五色の浜セクションの白亜系Aptianの深海チャートについて、電界放出型電子線マイクロアナライザ(FE-EPMA)を用いた堆積岩岩石学的手法により堆積環境の推定を行った。その結果、AptianのOAE 1a時期に粒径数10 µmを超えるシルト−極細粒砂層がチャート層中に複数枚確認された。また、苦鉄質な組成の粒子が多いことから、おそらく海洋島を供給源とする洪水流堆積物と解釈される。Nakagawa et al. (2022)では同層準から植物片を報告し、OAE 1a時期の大気中のCO2レベルが増加した期間に多産していることから、温暖環境下での植生増加や水循環の激化に関連した可能性を示唆した。今回、同層準に洪水堆積物が確認されたことから、洪水の規模が植物片の産出に重要であった可能性が高い。1 mm/kyrの平均堆積速度を考慮すると、数1000年スケールで深海平原まで土砂を運搬する大規模洪水が繰り返したことが示唆される。低緯度の降水量増加は土壌侵食によって風化効率を高め、貧酸素水塊を拡大させる要因の一つであった可能性がある。