日本地球惑星科学連合2023年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 H (地球人間圏科学) » H-CG 地球人間圏科学複合領域・一般

[H-CG22] 堆積・侵食・地形発達プロセスから読み取る地球表層環境変動

2023年5月22日(月) 15:30 〜 17:00 201B (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:清家 弘治(産業技術総合研究所・地質調査総合センター)、池田 昌之(東京大学)、菊地 一輝(京都大学大学院 理学研究科 地球惑星科学専攻)、高柳 栄子(東北大学大学院理学研究科地学専攻)、座長:池田 昌之(東京大学)、菊地 一輝(京都大学大学院 理学研究科 地球惑星科学専攻)、清家 弘治(産業技術総合研究所・地質調査総合センター)

16:45 〜 17:00

[HCG22-11] スケーリング拡張に向けた流路側方移動の現象論モデルの探求

*宮田 廉太朗1遠藤 徳孝1 (1.金沢大学大学院自然科学研究科)

キーワード:河川地形発達、側方侵食

河川における自然現象は大小様々な時空間スケールの現象が相互に影響しあって成り立つ複雑系として知られている。例えば、時間スケールが1分未満、空間スケールが数メートルの範囲での乱流や、時間スケールが数千年、空間スケールが流域規模で見たときの分水界の移動などが挙げられる。従って、河川地形の研究は、着目する現象が違えば、時空間スケールも異なる。河川地形発達に関して時空間スケールが最も大きい流域スケールで見た岩盤河川地形発達を対象とした数値計算モデルとしてLEM(Landscape Evolution Model)の開発が行われ、様々なバリエーションが存在する。LEM全体に共通する重要な課題として、計算モデルによって生成される地形は(1)静的平衡状態に達する(2)初期地形の影響を大きく受ける、の2点があげられる(Kwang et al., 2019)。(1)はあらゆる地点で隆起作用と侵食作用が釣り合うことで地形が“固まる”ことを意味し、側方侵食による流路の移動など一般によく観察される事実に反する。(2)は多くの異なる流域でよく似た地形的特徴を持っているという事実と相いれない。従来のLEMに対する改善として、側方侵食プロセスを流域スケールのモデルに実装したLangston & Tucker (2018)では(a)流量と流路の側方移動性(b)岩盤強度と流路の側方移動性(c)勾配と側方侵食の相関を定式化した。一方、先行研究のモデル実験や自然地形解析の結果からは、側方侵食が土砂供給量や動的な川幅の変化と密接に関連していることが示唆されている。よって、モデルの精度を向上させるためには、側方侵食プロセスがこれらの物理量と関連した新たなモデリングが求められる。これを実現するためには、(I)土砂供給量と明示的な関係を持つ河道侵食理論の適用(II)動的川幅の実装(III)長期タイムスケールでの土砂動態モデリングが必要である。(I)に関しては、既存のモデルを利用する場合、流速と水深の情報が必要であるが、2次元浅水方程式などを解くと計算コストの大きさが課題となる。(II)は、正方格子グリッド上だと、地形表現がセルサイズに制限され連続的な変化を表現するのが困難という問題がある。(III)に関しては、既存モデルが複数存在するが、仮定されている物理プロセスのタイムスケールは、軽い計算コストの流域スケール・モデル計算で想定される計算タイムステップよりはるかに短く、タイムスケールに不一致が起きる。本研究では、これらの解決方法となる、軽コストの流域スケールモデリングに適したタイムスケールの側方移動に関する現象論的式を得ることが可能かどうかを検討する。