日本地球惑星科学連合2023年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 H (地球人間圏科学) » H-CG 地球人間圏科学複合領域・一般

[H-CG25] 文化水文学

2023年5月24日(水) 15:30 〜 16:45 201B (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:中村 高志(山梨大学大学院・国際流域環境研究センター)、近藤 康久(総合地球環境学研究所)、安原 正也(立正大学地球環境科学部)、高橋 そよ(琉球大学)、座長:近藤 康久(総合地球環境学研究所)、中村 高志(山梨大学大学院・国際流域環境研究センター)、高橋 そよ(琉球大学)、安原 正也(立正大学地球環境科学部)

15:30 〜 15:45

[HCG25-01] カンボジア農村部における飲料水家庭内管理に関する報告

★招待講演

伊藤 弥生1、*宮本 和子1 (1.国立大学法人 山梨大学)

キーワード:カンボジア、飲料水、大腸菌群

背景:開発途上国の一つであるカンボジア、特に農村部では安全な飲料水確保が課題とされている。
目的:カンボジア農村部の家庭で飲料水を得るプロセスと管理状況や課題を明らかにすること。
研究方法:飲料水の採取から飲用までのプロセスに関する観察と聞取り調査およびコンパクトドライを用いた培養実験。
結果:カンポット州のある5か村で13家庭を調査した。元となる水源は井戸と天水であった。水源から飲用までのプロセスは7段階に整理されたが、各家庭でさまざまであった。水源の多くから大腸菌群が検出された。飲用までの過程で煮沸やフィルターろ過を行うことで大腸菌群が検出されない水が確保されていた。しかし、その後使用する飲用容器や保管容器のほとんどから大腸菌が検出され、飲用段階で大腸菌が検出されない飲料水は1件のみであった。30m程度の深さの堀井戸からの水は大腸菌群汚染が無い、または軽度であったが、臭いがする、おいしくないなどの理由で、直接飲料水として用いられている例はなかった。
考察:煮沸やフィルターろ過という大腸菌群を適切に除去する方法が用いられても、その後のプロセスで飲用時には大腸菌群に汚染されていた。飲料水による下痢症発生のリスクが高い状態にある。比較的大腸菌群汚染が少ない堀井戸からの水は飲料水として好まれないず、大腸菌群が多数存在する天水の方が好まれていた。飲料水の選択は安全性のみでなく、嗜好が重要な要素であると考える。
結論:農村部で安全な飲料水を確保するには解決すべき様々な課題がある。利用者である住民とこれらの課題を共有し、安全な飲料水確保方法を検討する必要がある。
(当日の発表者は筆頭著者である伊藤弥生が担当いたします)