16:15 〜 16:30
[HCG25-04] アラビア乾燥地の文化水文学:オマーンの伝統的灌漑システム「ファラージュ」の考古学的起源について
キーワード:文化水文学、考古地理学、南東アラビア、灌漑システム、ファラージュ
本セッションのテーマである文化水文学は、人間と水資源の関わりを文化の側面から理解するアプローチであり、地理学にルーツを持つ古くて新しい学問領域である。本発表では、アラビア乾燥地における水資源の利用と管理の歴史を、文化水文学の視点から読み解きたい。
アラビア半島南東部(現在のアラブ首長国連邦とオマーン)を横切るハジャル山脈の山間・山麓部では「ファラージュ」と呼ばれる伝統的な地下式灌漑水路システムが見られる。近年、考古学的調査により、取水路の起源が5000年前の前期青銅器時代にさかのぼることが明らかになった。この頃から、各地の沖積低地微高地に現在のオアシスの起源となる集落が形成される。集落にはタワーと呼ばれる円形基壇が築かれた。タワーは中央に井戸を持ち、初期には水利施設であったと推定されるが、後に大型化し、実用よりも記念碑の性格が強まる。利水技術の発展が、社会の発展とたしかに結びついていたようである。
アラビア半島南東部(現在のアラブ首長国連邦とオマーン)を横切るハジャル山脈の山間・山麓部では「ファラージュ」と呼ばれる伝統的な地下式灌漑水路システムが見られる。近年、考古学的調査により、取水路の起源が5000年前の前期青銅器時代にさかのぼることが明らかになった。この頃から、各地の沖積低地微高地に現在のオアシスの起源となる集落が形成される。集落にはタワーと呼ばれる円形基壇が築かれた。タワーは中央に井戸を持ち、初期には水利施設であったと推定されるが、後に大型化し、実用よりも記念碑の性格が強まる。利水技術の発展が、社会の発展とたしかに結びついていたようである。