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[HCG25-P02] 南東アラビアにおける先史時代の利水と治水の考古地理学的事例
キーワード:文化水文学、考古地理学、オマーン、灌漑水路、ファラージュ
本発表では、セッションのテーマである文化水文学の視点から、南東アラビア乾燥地のオマーンにおける先史時代の灌漑施設の事例を再検討する。近年、オマーン内陸部のアラリド遺跡で、5000年前に遡る小水路址が検出された。近隣の世界遺産バート遺跡では、沖積低地縁辺の微高地に同時期以降の墓群と円形基壇(タワー)が形成される一方、低地に浅い涸れ谷を締め切るように石列が築かれ、洪水を堰き止めるダムの役割を果たしていたことが推測される。乾燥地の限られた水資源を有効活用する知恵は、後代の地下式灌漑水路システム「ファラージュ」に発展的に継承され、オマーン伝統社会の基礎をなす社会技術となっていった。