日本地球惑星科学連合2023年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 H (地球人間圏科学) » H-DS 防災地球科学

[H-DS06] 津波とその予測

2023年5月23日(火) 09:00 〜 10:15 106 (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:室谷 智子(国立科学博物館)、馬場 俊孝(徳島大学大学院産業理工学研究部)、座長:伊尾木 圭衣(産業技術総合研究所)、南 拓人(神戸大学大学院理学研究科惑星学専攻新領域惑星学講座)

09:30 〜 09:45

[HDS06-08] 津波とメガスラスト地震の防災警報:物理的ウエーブレットを用いた生成過程のリアルタイムモニター

*武田 文秀1,2 (1.(株)武田エンジニアリング・コンサルタント、2.(社)地震予知研究所)

キーワード:メガスラスト地震の生成過程、津波の生成過程、メガスラスト地震防災警報、津波防災警報、物理的ウエーブレット

沈み込み帯に発生したメガスラスト地震(巨大地震と津波)と大地震の生成過程(3~15ヶ月)は、震源カタログ[1]とGPS座標時系列 [2]にある。記録を物理的ウエーブレット(PWs)で観測すると、地震の発生日(±1日)、断層の場所・大きさ・運動を、発生3ヶ月前から予知できる[3-6]。東北巨大地震の場合、地震と津波の発生3ヶ月前からの予知情報が、巨大台風の災害・防災警報と同様な警報となるが、その適切な運用は困難である[4,7,8]。
津波警報
図1のGPS観測点の日々の変位時系列は、西から東をE、南から北をN、地表から上向きをhとする右系c = (E,N,h)で、{c}={d(c,0), ., d(c,j), .}となる。j は時間で単位は1日である。変位d(c,j)は環境ノイズを含み微分不可能であるが、時刻tにおけるPWsとの相関で、ノイズの無い変位D(c,t)、速度V(c,t)、加速度A(c,t)を抽出できる。D(c,t)-V(c,t)とD(c,t)-A(c,t)面上の経路は、東北巨大地震の15ヶ月間の生成過程を描き、後半3ヶ月の太平洋プレートの異常運動経路が津波警報となる[4,6]。図1bの観測点1、2、3は、図2の断面模式図の東海岸ETOP(東北地方の峰)、西海岸Wに相当する。
(a) 略200㎞×500㎞の断層(Fault)の固着が、西海岸を押上げ(1.5 mm/y)、東海岸を沈降(6 mm/y)させていた。海洋プレートの動きは西へ0.1mm/day、北へ0.03mm/dayであった。何百年以上も継続していたと推測されるこれら押上と沈降がregular deformationである。
2010年1月、西海岸の加速度A(E,t)>0(東向き)は、A(E,t)<0と逆転し、東海岸、TOPもそれぞれ6月、10月に逆転した。6月9日までに、東海岸は2.8 mm沈降し、西海岸とTOPもそれぞれ1mm、1.5 mm沈降した。1月の逆転A(E,t)が膨らみの初期過程開始である。膨らみ変形は、東海岸を沈降させ(断層を押さえ)、地震が発生する迄に、東西海岸をそれぞれ13.2mm、18.4mm線形圧縮した。
(b) 2010年6月、膨らみの変形遷移が始まった。遷移は、海洋プレートのFault部分に東海岸を、線形的に更に3.3 mm沈降させながら矢印方向へsubducting plateを引き込み始めた。5ヶ月後の12月22日には、プレートの西向きV(E,t)は最高値の0.69 mm/day(初期の約3倍)となった。遷移期間中、東海岸は沈降するが、東海岸を持上げる平均加速度は初期過程の約100倍の8.99 × 10–5 mm/day2となった。
(c) 2010年11月からの東海岸の膨らみ変形は、地震発生までに、沈降を1.2mmからなる線形押上に反転させるが、持上げ平均加速度は半減した。膨らみに加わった押上変形が、引き込まれていた海洋プレート運動に急ブレーキをかけ、2月25日に停止させ、3月8日、東方向へV(E,t)=0.06 mm/dayと反転させた。2011年3月11日、矢印とおり、巨大地震と津波を発生させた。従って、地震発生までの3ヶ月間の海洋プレートの異常運動が、巨大地震・津波のリアルタイム防災警報となる。
海洋プレート運動の異常監視
海洋プレート運動には、月の潮汐力(29.5日周期)が作用する。東海岸の膨らみ変形が、予期せぬ外力として加わりプレートを引きずり込み始めると、プレートはその外力に応答し、{c }の30日周期の潮汐力の振幅と位相を徐々に変化させる。D(c,t)-V(c,t)とD(c,t)-A(c,t)面に描かれる応答経路は、運動エネルギーの変化率と閾値、PW(c,t)=V(c,tA(c,t)>閾値、で監視できる。閾値はプレートの通常運動に予期できない値に自動設定できるので、その異常検出が、津波防災警報とリアルタイム避難勧告を発令する[3,4,6,8]。
[1] https://www.hinet.bosai.go.jp/?LANG=en
[2] https://mekira.gsi.go.jp/index.en.html
[3] Takeda, F. (2015) https://patents.google.com/patent/JP5798545B2/ja
[4] Takeda, F. (2021) https://doi.org/10.48550/arXiv.2107.02799
[5] Takeda, F. (2022) https://doi.org/10.48550/arXiv.2201.02815
[6] Takeda, F. (2022) https://doi.org/10.48550/arXiv.2208.09486
[7] https://www.tec21.jp
[8] https://www.epi21.org