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[HDS06-P06] 津波ハザードカーブの構築における地震の不均質すべりの重要性
キーワード:津波ハザードカーブ、津波解析
2011年東北地方太平洋沖地震による巨大津波は,従来用いていた決定論的な津波評価を超える甚大な浸水被害を及ぼした.このことから,過去に発生していない地震津波も想定した確率論的津波ハザード評価が行なわれるようになってきた.防災科学技術研究所のJ-THIS津波ハザードステーションでは,83ケースの震源域に不均質な断層すべりを考慮した3480ケースの波源断層モデル群を想定し,確率論的津波ハザード評価を行っている.ただし,確率論的津波ハザード評価を実用するためには,評価結果(例えば,ハザードカーブ)の性質をよく理解しておく必要があるだろう.そこで,本研究では地震シナリオに不均質すべりを考慮する必要性を定量的に示すことを目的とした.具体的には不均質すべり3480ケースの波源断層モデルと均質すべり83ケースの波源断層モデルから構築した津波ハザードカーブを比較した.
九州地方では,最大津波高が大きくなると不均質すべりのハザードカーブと均質すべりのハザードカーブのずれが大きくなった.不均質すべりのほうの超過確率が高い.これは,不均質すべりには大すべり域・超大すべり域が設定されており,同じ震源域でも大きなすべりが評価点の近くにある場合,津波高さが大きくなるからである.本研究では藤原ほか(2020)で用いられたパラメタで津波計算のばらつき(σ=0.35)を考慮しているが,σの値を0.65に変更した均質すべりシナリオから作られた津波ハザードカーブは,σ=0.35の不均質すべりのそれとほぼ同じだった.一方,瀬戸内地域では,不均質すべりの津波ハザードカーブと均質すべりの津波ハザードカーブに違いはなかった(ともに,σ=0.35).これは,瀬戸内は震源域から遠く,不均質すべりの影響を受けづらいためと考えられる.また,σ=0.65に変更した均質すべりシナリオから作られた津波ハザードカーブは,σ=0.35の不均質すべりのそれを大きく超えた.だから,津波計算コストの低い均質すべりモデルのみで不均質すべりモデルの津波ハザードカーブを再現することを考えるとして,単にσの値を変更すればよいというわけではなさそうである.
九州地方では,最大津波高が大きくなると不均質すべりのハザードカーブと均質すべりのハザードカーブのずれが大きくなった.不均質すべりのほうの超過確率が高い.これは,不均質すべりには大すべり域・超大すべり域が設定されており,同じ震源域でも大きなすべりが評価点の近くにある場合,津波高さが大きくなるからである.本研究では藤原ほか(2020)で用いられたパラメタで津波計算のばらつき(σ=0.35)を考慮しているが,σの値を0.65に変更した均質すべりシナリオから作られた津波ハザードカーブは,σ=0.35の不均質すべりのそれとほぼ同じだった.一方,瀬戸内地域では,不均質すべりの津波ハザードカーブと均質すべりの津波ハザードカーブに違いはなかった(ともに,σ=0.35).これは,瀬戸内は震源域から遠く,不均質すべりの影響を受けづらいためと考えられる.また,σ=0.65に変更した均質すべりシナリオから作られた津波ハザードカーブは,σ=0.35の不均質すべりのそれを大きく超えた.だから,津波計算コストの低い均質すべりモデルのみで不均質すべりモデルの津波ハザードカーブを再現することを考えるとして,単にσの値を変更すればよいというわけではなさそうである.