日本地球惑星科学連合2023年大会

講演情報

[J] オンラインポスター発表

セッション記号 H (地球人間圏科学) » H-DS 防災地球科学

[H-DS07] 災害リスク軽減のための防災リテラシー

2023年5月23日(火) 10:45 〜 12:15 オンラインポスターZoom会場 (8) (オンラインポスター)

コンビーナ:高橋 誠(名古屋大学大学院環境学研究科)、木村 玲欧(兵庫県立大学)


現地ポスター発表開催日時 (2023/5/22 17:15-18:45)

10:45 〜 12:15

[HDS07-P07] 高校生が防災に「わがこと意識」を持つための防災訓練プログラムの開発

*木村 玲欧1、合川 和希2 (1.兵庫県立大学、2.堺市消防局)

キーワード:防災訓練プログラム、わがこと意識、インストラクショナル・デザイン、アディーモデル、ドローン、防災ゲーム

日本の各種学校では毎年複数回の防災訓練が実施されている。これは学校保健安全法第29条2項および消防法第36条を根拠とするものである。しかし防災訓練について、地域の災害リスクについて学ぶ機会がない、教員の防災教育に関する資質能力等により教育内容に差が生じる、住民を巻き込んだ地域ぐるみの訓練になっていないなどの多くの課題が挙げられている。このため、高校生が防災に「わがこと意識」(身近なこととして自分たちに引きつけて考えること)を持つための、防災訓練プログラムの開発を行った。訓練プログラム開発にあたっては、教育活動の効果・効率・魅力を高めるための理論であるID(インストラクショナル・デザイン)のADDIE(アディー)モデルを採用した。
 対象校は、兵庫県立佐用高等学校である。佐用町は、2009年8月の豪雨災害で死者・行方不明者20人、家屋被害1,700棟以上の大きな被害となった。しかし災害から10年以上が経過し、佐用町外から通学する高校生を含めて、災害に対する「わがこと意識」は高くない現状にある。そこで、「佐用町の過去を知る」「佐用町の現状を知る」「課題を理解し、未来に備える」の3つの学習目標を設定して、高校生の興味を高める訓練プログラムを設計した。具体的には、1)緊急地震速報によるシェイクアウト訓練、2)スピーカードローンからの避難誘導による避難訓練、3)ドローンを用いた物資輸送のデモンストレーション、4)2009年佐用町災害における被害映像および被災体験談の視聴、5)佐用町のハザードマップによる被害想定の理解、6)防災ゲームによる防災基礎知識の習得の6つの訓練プログラムを設計した。プログラム設計にあたっては、学習指導案、教材用パワーポイント等を作成した。
 本訓練プログラムの実施日は、2021年12月10日であった。佐用高等学校3年生163名について、1~6までの訓練プログラムを実施した。3つの学習目標・6つの訓練プログラムに関係する21項目の学習目標について、事前事後に生徒に自己評価をしてもらった。回答内容を分析したところ、全項目について統計的に有意な上昇が見られ、訓練プログラムが学習目標の達成に有効であることがわかった。また、因子分析をしたところ、事前の自己評価では、学習目標について、災害に関する知識、ドローンに関する知識、佐用町の大雨災害に関する知識、佐用町の地震災害に関する知識の4因子が抽出されたが、事後の自己評価では、災害時に自分が取るべき行動、災害時のリスクに関する知識の2因子が抽出された。これらの結果から、訓練プログラムを通して、抽象的であった自然災害のイメージが訓練を通して具体的になり、災害に対する「わがこと意識」が育まれたことが明らかになった。