日本地球惑星科学連合2023年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 H (地球人間圏科学) » H-DS 防災地球科学

[H-DS08] 人間環境と災害リスク

2023年5月23日(火) 15:30 〜 16:45 201B (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:佐藤 浩(日本大学文理学部)、畑山 満則(京都大学防災研究所)、中埜 貴元(国土交通省国土地理院)、座長:畑山 満則(京都大学防災研究所)、佐藤 浩(日本大学文理学部)

15:30 〜 15:45

[HDS08-06] InSAR時系列解析とGNSS観測を用いた宅地地盤変動の検出

*宮嶋 愛菜1福島 洋2 (1.東北大学大学院理学研究科、2.東北大学災害科学国際研究所)


キーワード:谷埋め盛土、地すべり、InSAR時系列解析、GNSS観測

日本では、戦後の都市化に伴い宅地の需要が増加し、盛土や切土等の大規模な地形改変を伴う宅地造成が各地で行われてきた。こうした宅地開発は、新たな斜面災害のリスクをもたらし、実際に2011年東北地方太平洋沖地震や2016年熊本地震、2018年北海道胆振東部地震といった様々な地震で盛土の地すべりや不同沈下等による多数の宅地被害(人的被害を含む)が報告されている。造成から数十年が経過した現在、強震や豪雨の際にこのような被害が発生する危険性は年々高まりつつあるため、宅地地盤の健全性を評価・監視し、必要に応じて対策を講じていくことは極めて重要である。著者らは、このような宅地地盤の変動調査手法として、衛星画像からわずかな地面の変動を捉える技術であるInSAR解析に着目し、宅地造成地が多数分布する宮城県仙台市を対象に、2011年東北地方太平洋沖地震時の同解析を実施し、その利用可能性を検討した(宮嶋ほか,2022,自然災害科学)。その結果、盛土部において既往の現地被害調査報告に整合的な変動が検出され、宅地地盤変動検出におけるInSARの有効性を示すことができた。同結果では、既往の被害調査報告箇所にとどまらず数 cm程度の微小な地盤沈下も捉えられたが、このようなわずかな変化は目視では明瞭に確認できないため、そのシグナルの実証が課題である。そこで、本研究では宅地造成地の盛土部にGNSS観測機器を設置・観測を行い、InSARとGNSS解析結果の比較により、InSAR解析で検出されたシグナルの信頼性検証を目的とした研究を行う。
本研究では、宮城県仙台市を対象とし、1.InSAR時系列解析、2.盛土部におけるGNSS観測、3.InSARとGNSS解析結果の比較による検証を行う。GNSS観測候補地点の選出のため、福島県沖にて2021年2月13日に発生した地震(M7.3)と2022年3月16日に発生した地震(M7.4)の各前後にALOS-2衛星によって撮像されたデータを用いてInSAR解析を行った結果、仙台市内の複数の宅地造成地(太白区八木山地区、緑ヶ丘地区、泉区館地区など)において数 cm程度の衛星から遠ざかる変動が検出された。また、2011年東北地方太平洋沖地震時に仙台市内で明瞭な位相変化が見られていた泉区七北田川流域では、ほとんどの宅地造成地において変動が検出されなかった。この結果は、仙台市内の宅地造成地において強震による反応が異なることを示唆する。本発表では、以上の報告に加え、GNSS観測の状況や、StaMPSソフトウェア(Hooper, 2008)によるInSAR時系列解析の取り組み状況についても報告する。