日本地球惑星科学連合2023年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 H (地球人間圏科学) » H-DS 防災地球科学

[H-DS08] 人間環境と災害リスク

2023年5月23日(火) 15:30 〜 16:45 201B (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:佐藤 浩(日本大学文理学部)、畑山 満則(京都大学防災研究所)、中埜 貴元(国土交通省国土地理院)、座長:畑山 満則(京都大学防災研究所)、佐藤 浩(日本大学文理学部)

16:15 〜 16:30

[HDS08-09] 水害時の人的被害ポテンシャルに関する考察

*畑山 満則1、川村 崇也2 (1.京都大学防災研究所、2.滋賀大学)

キーワード:豪雨災害、避難

近年、気候変動の影響で、河川整備基準を超える降雨の発生頻度が大きくなっている。気象庁は、2013年から数十年に一度の降水量が予想される場合に大雨特別警報を発表しているが、以降毎年日本のどこかで大雨特別警報が発表されていることからも明らかである。2015年の水防法の改正では、浸水想定区域図作成時の想定降雨を、これまでの計画規模降雨(50-200年に一度)から想定最大規模降雨(おおよそ1000年に一度)に変更され、避難においても明示的に超過外力によるハザードを意識することとなっている。
矢守らは、豪雨災害の事例を災害現象が顕在化したか否か、人的被害が生じたか否かという2つの軸をもちいて4つのタイプに分別し、災害現象が顕在化せず、人的被害も生じなかった事例(潜在的)の重要性を指摘している。本研究では、潜在的事例を、災害現象が発生する以前から特定することを目的とする。
本研究では、人的被害は、災害への危機感の欠如から生じる可能性が高いと考え、人的被害ポンテンシャルを、頻度の高い確率降雨での浸水被害が小さいにもかかわらず、超過外力がかかる頻度の低い確率降雨では被害が大きくなる地域を人的被害ポテンシャルが高い地域と定義し、該当する地域の分布を可視化することを試みた。
使用したデータは、滋賀県防災情報マップの最大浸水深図10年、100年、200年確率のデータである。このデータは各確率に応じて浸水深カテゴリを、001(0.5m未満)、002(0.5~1.0m)、003(1.0~2.0m)、004(2.0~3.0m)、005(3.0~5.0m)、006(3.0~4.0m)、007(5.0m以上)と設定し、その領域を示すものである。10年確率雨量において、最大浸水深が0または001のカテゴリに属するもので、超過外力である200年確率雨量の、最大浸水深が2m以上になる(004、005、006、007)となる領域をGISにより作成し、さらに地番地図情報から建物が存在する地域を取り出すことで、滋賀県における人的被害ポテンシャル分布を作成することを行った。結果として滋賀県内で28か所の地域が、人的被害ポテンシャルの高い地域として取り出すことができた。図に長浜市虎姫地区の人的被害ポイテンシャル分布を示す。図から200年確率を想定した浸水想定区域図において、浸水深の高い地区ではなく、その周りに対象地域があることがわかる。頻度の高い降雨では避難の必要がないことが影響している地区と考えることができる。
今後は、本研究で取り出された地区において、住民にヒアリング調査を行い、提案した人的被害ポテンシャルの有効性について検証することを考えている。
参考文献
矢守克也・竹之内健介 ・大西 正光 ・佐山 敬洋 ・本間 基寛(2019).,豪雨災害について考えるためのFACP モデル,京都大学防災研究所 平成 30 年7 月豪雨災害調査報告書pp.91-92.
畑山満則・多々納裕一:姉川・高時川下流域における水害リスクに関する考察,日本地球惑星科学連合2010年大会講演論文集,HSC015-04,CDROM,2010.