日本地球惑星科学連合2023年大会

講演情報

[J] オンラインポスター発表

セッション記号 H (地球人間圏科学) » H-DS 防災地球科学

[H-DS10] 湿潤変動帯の地質災害とその前兆

2023年5月26日(金) 15:30 〜 17:00 オンラインポスターZoom会場 (8) (オンラインポスター)

コンビーナ:苅谷 愛彦(専修大学文学部環境地理学科)、内田 太郎(筑波大学)、西井 稜子(新潟大学)

現地ポスター発表開催日時 (2023/5/25 17:15-18:45)

15:30 〜 17:00

[HDS10-P04] 大規模地震による崩壊発生後の土砂生産と土砂流出の季節変化

*厚井 高志1、北村 明希子2、桂 真也2,1 (1.北海道大学広域複合災害研究センター、2.北海道大学大学院農学研究院)

キーワード:土砂生産、土砂流出、表層崩壊、火山地域、2018年北海道胆振東部地震

2018年9月6日未明に発生した北海道胆振東部地震(Mw 6.6)では厚真町・安平町を中心に7,000か所以上で表層崩壊が発生した。一般に崩壊斜面は時間の経過とともに植生が回復し,斜面からの土砂生産は低減していくと考えられる。しかしながら,こうした土砂動態を崩壊発生直後から長期的にモニタリングした事例は少なく,植生回復や崩壊発生後の土砂動態が時間の経過ともにどのように変化するのかは明らかではない。特に,北海道では冬季の積雪に伴う凍結融解が流域の土砂動態に影響している可能性もある。また,この地震により崩壊が多発した地域の表層土壌は主に火山噴出物であり,生産土砂の構成材料は比較的細粒であることから,崩壊土砂が下流域に流出した場合,流水の混濁や水質変化といった影響が長期化する懸念がある。本研究では,胆振東部地震によって表層崩壊が多発した厚真川水系ハビウ川流域(流域面積0.37 km2)において,裸地化した崩壊斜面からの土砂生産や土砂移動を引き起こす水文情報に着目し,地震発生後約4年間の土砂動態を季節変化にも着目して明らかにすることを目的とした。崩壊斜面からの土砂生産は,地震発生以降にUAV(DJI社Phontom 4 RTK)で定期的に撮影した空中写真を用いたSfM(Structure from Motion)によって得られた標高データを使用し,2時期の標高データの差分解析から崩壊斜面の標高値の変化量を崩壊地ごとに把握した。得られた変化量を,主に4月から12月にかけての降雨イベントや冬期の地温変化を踏まえた凍結融解によると想定される土砂生産,および土砂流出の季節変化の特徴を崩壊地形状や斜面向きの違いも考慮して特徴づけた。土砂流出の変化は流域出口付近に濁度計を設置して把握した。2時期の標高データの差分解析から,崩壊斜面形状に応じて土砂生産状況が異なっていた。すなわち,谷地形を有する崩壊斜面では高強度の降雨イベントを含む期間ではガリー侵食が卓越し,新たな土砂生産の進行が確認された。一方,同じ期間であっても平滑斜面では顕著なガリー侵食が確認できなかった。流域からの土砂流出の変化は,降雨出水規模とよく対応しており,降雨開始直後の濁度上昇と終了直後の速やかな逓減が確認できた。さらに,融雪期にも濁度上昇が確認されたことから,斜面や河道を起源とする土砂生産が融雪期の土砂流出を引き起こしている可能性がある。本研究の結果,地震から4年以上が経過しても土砂生産,土砂流出が降雨や凍結融解に起因して断続的に発生しており,崩壊時に生産された土砂だけではなく,崩壊土砂を起源としない新たな土砂生産も生じていることから,今後もしばらく同様の状態が継続することが想定される。