日本地球惑星科学連合2023年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 H (地球人間圏科学) » H-GM 地形学

[H-GM02] 地形

2023年5月25日(木) 09:00 〜 10:15 展示場特設会場 (3) (幕張メッセ国際展示場)

コンビーナ:齋藤 仁(名古屋大学 大学院環境学研究科)、岩橋 純子(国土地理院)、Parkner Thomas(University of Tsukuba, Graduate School of Life and Environmental Sciences)、高波 紳太郎(明治大学)、座長:岩橋 純子(国土地理院)、高波 紳太郎(明治大学)、齋藤 仁(名古屋大学 大学院環境学研究科)


09:00 〜 09:15

[HGM02-01] 高密度点群データを用いた地下文化遺産と表層地形の解析―田谷の洞窟における事例―

*高木 優1小倉 拓郎2田村 裕彦3小口 千明4早川 裕弌5佐藤 昌人6八反地 剛7 (1.筑波大学大学院理工情報生命学術院生命地球科学研究群、2.兵庫教育大学学校教育研究科、3.田谷の洞窟保存実行委員会、4.埼玉大学理工学研究科、5.北海道大学地球環境科学研究院、6.防災科学技術研究所、7.筑波大学生命環境系)


キーワード:UAV-LiDAR、TLS、GIS、高密度点群データ

日本各地には,石炭や石材の採掘跡や防空壕跡など地下空洞が存在している.地下空洞が劣化し,崩落が上方拡大して,陥没孔が生じる現象として浅所陥没がある.浅所陥没の対策として埋め戻しを施すことは一般的であるが,地下文化遺産など地中にある空洞が保存対象である場合は,保全の観点から非破壊的な計測や手法が必要である.空洞の形状や位置関係を把握する非破壊的な手段の一つに,LiDAR(Light Detection And Ranging)計測がある.LiDAR計測を用いることによって高密度な点群データを取得でき,点群データからDEM(Digital Elevation Model:数値標高モデル)を作成してGIS(Geographic Information System:地理情報システム)上で解析できるメリットがある.本研究では,浅所陥没現象により空洞の損壊が発生している,横浜市登録史跡の「田谷の洞窟」とその直上の里山において, UAV(Unmanned Aerial Vehicle: ドローン)にLiDARを装着する手法,および地上レーザ測量(TLS: Terrestrial Laser Scanning)を用いて,地下文化遺産と表層地形の高密度点群データを取得した.取得した高密度点群データより作成したDEMに基づき,洞窟天面から地表面までの厚さ(土被り厚さ)や地形量(傾斜量,TWI(地形湿潤指標))を算出した.また,現地調査により洞窟の損壊現象の分布を整理し,損壊現象の種類ごとに,土被り厚さ,地形量を比較した.さらに点群データから里山の樹木の分布と樹幹径を計測し,洞窟の損壊現象との関係を考察した.その結果,田谷の洞窟では,陥没・洞内崩落・壁面剥離・クラックが確認できた.土被り厚さの平均は5. 86 m,傾斜量の平均は23.14°,TWIの平均は2.56であった.陥没が発生した箇所では土被りの平均が2.57 mと薄く,TWIの平均は3.34と大きかった.地盤の物性値から求めた崩落の限界高さが2 mであることを考慮すると,田谷の洞窟では土被りが3 mを下回ると陥没のリスクが高いことが示された.また,クラック発生箇所では,TWIが3.16と大きく,樹幹径の小さい樹木の密度が高かった.TWIが高い箇所と樹木が成長しやすい条件が揃うことによって,樹木の成長速度が速い.クラックの形成・拡大は,樹根が成長することによって生じる根の成長圧によって生じる.クラック発生箇所では,樹齢が若い根圧が高い樹木が分布していたため,壁面に亀裂が生じたと考えられる.