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[HGM02-P03] 山口県防府市の山地小流域にみられる段丘堆積物
キーワード:ハゲ山、放射性炭素年代測定、土砂移動
中世以降人間活動が森林に負荷を与えることで,世界各地で森林荒廃が発生している.日本でも燃料用木材の伐採が原因となり,花崗岩の分布域を中心に植生が失われたハゲ山が形成された.本研究では,20世紀前半までハゲ山が広く分布したとされる山口県防府市内の小流域において地形判読と放射性炭素年代測定を行い,流域内の土砂移動プロセスの変化について考察した.調査対象の2つの小流域には100 m2前後の小規模な段丘が形成されており,その堆積物は下位と上位の二層に区分できる.下位層は層厚およそ2 mで細礫を中心としたマトリックスに粒径1 m以上の巨礫を含む淘汰の悪い堆積物で構成されており,その特徴から土石流堆積物であると考えられる.下位の堆積物中の炭質物試料の年代から,土石流の堆積時期は1442~1515 cal AD頃とみられる.上位層は層厚およそ1 mで粒径1 mm未満の砂を多く含む淘汰の良いマサ層によって構成されていた.史料調査により,防府付近では西暦1700年頃の製塩業の発展に伴い燃料用木材が大量に伐採され,西暦1717年頃にはハゲ山の存在が記録されていることが判明した.段丘露頭の上位マサ層は,森林荒廃から起きた大量の土砂流出により1500 cal AD以降に堆積し,それに伴い河床が上昇したと考えられる.したがって小流域内では,過去に土石流から土砂流または掃流へ土砂移動プロセスが変化したと考えられる.