日本地球惑星科学連合2023年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 H (地球人間圏科学) » H-QR 第四紀学

[H-QR03] 第四紀:ヒトと環境系の時系列ダイナミクス

2023年5月21日(日) 10:45 〜 11:45 201B (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:山田 和芳(早稲田大学人間科学学術院)、堀 和明(東北大学大学院理学研究科地学専攻)、田村 亨(産業技術総合研究所地質情報研究部門)、卜部 厚志(新潟大学災害・復興科学研究所)、座長:山田 和芳(早稲田大学人間科学学術院)、堀 和明(東北大学大学院理学研究科地学専攻)、田村 亨(産業技術総合研究所地質情報研究部門)、卜部 厚志(新潟大学災害・復興科学研究所)


10:45 〜 11:00

[HQR03-07] アナトリア中部カマン・カレホユック遺跡近傍古沼地堆積物掘削試料を用いた青銅器時代以降の地域的環境復元:予察的研究

*鈴木 健太1多田 隆治1多田 賢弘1山田 桂2香月 興太3、Şahin Hilal4、佐竹 渉1、松村 公仁5、Arikan Bulent4、大村 幸弘5、松井 孝典1 (1.千葉工業大学地球学研究センター、2.信州大学理学部、3.島根大学エスチュアリー研究センター、4.イスタンブール工科大学、5.アナトリア考古学研究所)

キーワード:カマン・カレホユック、古環境復元

カマン・カレホユック遺跡はアナトリア中部に位置し,直径280m,高さ16 mの中規模の丘状遺跡である.これまでの発掘調査で,オスマン帝国時代,鉄器時代,後期・中期青銅器時代,前期青銅器時代の4つの文化層が確認されている.遺跡周辺の当時の地域的な古環境記録を連続的に復元することは,この遺跡での人間活動の変遷や技術進化と地域的自然環境変化の関係のより厳密な理解に役立つと考えられる.Kashima (2008)は,カマン・カレホユック遺跡周辺で複数の堆積物コアを採取し,鉄器時代から前期青銅器時代に対応する約4600~1800年前の間は湿潤で遺跡の周辺に沼地が形成されていたことを報告した.この古沼地の堆積物を連続的に回収し,高時間分解能で分析することで,遺跡とその周辺における青銅器時代~鉄器時代にかけての自然環境変化と遺跡内での人間活動の変化の前後関係の検討が可能となると期待される.
2022年9月にカマン・カレホユック遺跡北部の湿地跡で堆積物の掘削を行った.トルコでは国外への試料持ち出しが禁止されているため,トルコ国内で予察的研究として含水率,XRF core scanner,WD-XRF, XRDの分析を行った.本研究ではコア掘削と試料の観察・分析結果の概要を紹介する(分析結果の解釈は佐竹 他,本セッション).
掘削地点は,Kashima (2008)で報告されている最も古沼地の泥が厚く堆積している場所を選定し,掘削には,可搬型パーカッションピストンコアラー(菅沼 ほか,2019)を改良したコアラーを使用した.その結果,地表面から約87~168cm(KL2202-1コア)と,230~288cm深(KL2202-2コア)の堆積物が回収できた.KL2202-1コアの岩相は灰色から黒灰色のシルト質砂から砂で,KL2202-02コアの岩相は最上部が黒灰色の細礫質砂で,茶黄白色の砂質泥,灰色粘土質軟泥に変化していった. KL2202-02コアの含水率は砂の層準(>15%)よりも粘土質軟泥の層準(約20~30%)で高い値を示した.茶黄白色の砂質泥と灰色粘土質軟泥は岩相も物性が大きく異なっており,両者の間に黒灰色の細礫質砂が介在することから,灰色粘土質軟泥はKashima (2008)で報告された灰色砂質粘土層に対応すると考えられる.Kashima (2008)の年代モデルから灰色粘土質軟泥の上部は約2,800年前の鉄器時代に対応していると推定された.また,堆積物の供給源を推定するためにトルコの地質調査所(MTA)でKL2202-02コアから採取したスラブ試料のXRFコアスキャナーITRAXによる元素分析と,KL2202-1とKL2202-2コアから採取した試料の波長分散型XRF及びXRD分析を行った(詳細は佐竹 他,本セッション).粘土質軟泥層には炭化物や植物片が複数含まれており,放射性炭素年代測定により高時間解像度な年代モデルの構築が期待される.