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[HQR03-P13] ボーリング試料の全有機炭素,全窒素,全硫黄濃度による更新世以降の伊勢湾の堆積環境変遷
キーワード:伊勢湾、ボーリングコア、CNS元素濃度、堆積環境
濃尾平野は養老断層の活動によって西方へ傾動する層厚100 m以上の更新世以降の地層が分布し,多数のボーリング試料の結果を基に,層序区分やその形成過程の解明がなされてきた.一方,岩淵ほか(2000)が伊勢湾奥部のボーリング試料を用いて層相や年代について議論しているが,平野に比べて海域の情報は少ない.産業技術総合研究所では活断層調査のために,鈴鹿市白子町沖で白子―野間断層を挟んで2本のボーリング試料GS-IB18-1,GS-IB18-1-2を掘削した.天野ほか(2019)では記載や放射線炭素,光ルミネッセンス年代などの結果を基にGS-IB18-1は6セクション,GS-IB18-2は7セクションに区分し,下位から鮮新世~前期更新世の河川~氾濫原の砂~シルト層,中期更新世の河川から浅海域にかけての砂~砂質シルト層,最終間氷期の内湾~デルタの砂~シルト層,最終氷期の河川~河口の砂礫層,完新世の浅海から内湾の砂~シルト層からなることを示した.本研究はこれらボーリング試料の粒度,全有機炭素(TOC)・全窒素(TN)・全硫黄(TS)濃度,有機炭素安定同位体比(δ13Corg)の分析を行い,これら結果を基に更新世以降の伊勢湾の堆積環境変遷について検討した.
完新世と最終間氷期の内湾のシルト層ではTOC,TN濃度はそれぞれ0.10%,1.0%以上と相対的に高い.有機物起源の指標となる全有機炭素全窒素量比(C/N比)は10程度,δ13Corgは-23~-22‰を示し,これら結果はプランクトン起源の有機物が多く含まれていることを示す.一方,河川から浅海にかけての砂礫,砂,砂質シルト層ではTOC,TN濃度は大部分で相対的に低いが,急激な増加を示し,変動が大きい.またC/N比は20~30,δ13Corgは-28~-25‰で,これら結果は陸上高等植物起源の有機物寄与が高いことを示す.
TS濃度は,内湾,浅海の砂~シルト層で高く,河川の砂礫,砂,砂質シルト層では低い.また,完新世と最終間氷期のシルト層のTS濃度は上方に向かって徐々に減少する傾向を示す.堆積物中のTS濃度はパイライト量の変化を示し,海水,淡水の影響や海底の還元状態の指標となる.TS濃度が内湾~浅海の泥~シルト層で高く,河川の砂礫,砂,砂質シルト層で低いことは,海水,淡水の影響の変化を示唆する.完新世と最終間氷期のシルト層のTS濃度の減少傾向は,海水準上昇に伴い,海底の還元的状態が弱くなったことを示唆する.
完新世と最終間氷期の内湾のシルト層ではTOC,TN濃度はそれぞれ0.10%,1.0%以上と相対的に高い.有機物起源の指標となる全有機炭素全窒素量比(C/N比)は10程度,δ13Corgは-23~-22‰を示し,これら結果はプランクトン起源の有機物が多く含まれていることを示す.一方,河川から浅海にかけての砂礫,砂,砂質シルト層ではTOC,TN濃度は大部分で相対的に低いが,急激な増加を示し,変動が大きい.またC/N比は20~30,δ13Corgは-28~-25‰で,これら結果は陸上高等植物起源の有機物寄与が高いことを示す.
TS濃度は,内湾,浅海の砂~シルト層で高く,河川の砂礫,砂,砂質シルト層では低い.また,完新世と最終間氷期のシルト層のTS濃度は上方に向かって徐々に減少する傾向を示す.堆積物中のTS濃度はパイライト量の変化を示し,海水,淡水の影響や海底の還元状態の指標となる.TS濃度が内湾~浅海の泥~シルト層で高く,河川の砂礫,砂,砂質シルト層で低いことは,海水,淡水の影響の変化を示唆する.完新世と最終間氷期のシルト層のTS濃度の減少傾向は,海水準上昇に伴い,海底の還元的状態が弱くなったことを示唆する.