日本地球惑星科学連合2023年大会

講演情報

[J] オンラインポスター発表

セッション記号 H (地球人間圏科学) » H-RE 応用地質学・資源エネルギー利用

[H-RE12] 応用地質学の新展開

2023年5月26日(金) 10:45 〜 12:15 オンラインポスターZoom会場 (10) (オンラインポスター)

コンビーナ:竹村 貴人(日本大学文理学部地球科学科)、竹下 徹(北海道大学総合博物館・資料部)

現地ポスター発表開催日時 (2023/5/25 17:15-18:45)

10:45 〜 12:15

[HRE12-P06] 紀伊半島熊野川流域の付加体山地に認められる中期中新世以降の断裂系形成と深層崩壊との関係

*木村 克己1 (1.公益財団法人深田地質研究所)

キーワード:リニアメント、直交節理、地質制約、付加体

西南日本外帯の四万十帯の付加体堆積岩分布域で,数多くの深層崩壊が発生しているが,その地質制約条件として,覆瓦構造の面構造と脆弱な地層の分布だけでなく,深層崩壊の側面境界や地表水のみずみちとして,覆瓦構造を横断する断裂系の存在の重要性が指摘されている.しかし,付加体堆積岩分布域の従来の地質図においては,こうした断裂系の表示は限られ露頭記載も極めて乏しい.
 紀伊半島の熊野川流域では,後期白亜紀から古第三紀の四万十帯の付加体堆積岩が広く分布する.従来の地質図において,一般に東北東-西南西~北東-南西走向で北傾斜の覆瓦構造とそれを横断する北東-南西,北西-南東,南北方向の横断断層の存在が表現されている.大峰山脈・台高山脈を水源とする熊野川左支川の北山川流域では,中期中新世の珪長質火成作用により広く熱変成を受けて,岩石が硬化しており(細野ほか,2022),谷頭斜面や谷壁は急崖の岩壁斜面が発達している.
 本研究は,急崖をなす大峰山脈および北山川流域を調査地域として,5mDEMの傾斜量図と空中写真観察,露頭観察を基に,地形特性を把握し,断裂系のリニアメント解析を行った.その結果,中期中新世の熱変成事変以後に,形成順に,NW-SE, NE-SW方向の直交節理系,NSとEW方向の節理群,ENE-WSW方向の横ずれ断層の3系統の断裂群を識別した.これらの断裂系の配置から山地斜面の重力変形や栗平などの深層崩壊を地質的に制約していると考えられる.

文献
細野ほか(2022)紀伊半島南部の四万十帯と熊野層群の泥質岩におけるイライト結晶度と反発硬度の空間分布特性.応用地質,63,no.2.42-48.