日本地球惑星科学連合2023年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 H (地球人間圏科学) » H-SC 社会地球科学・社会都市システム

[H-SC04] 地球温暖化防⽌と地学(CO2地中貯留・有効利⽤、地球⼯学)

2023年5月24日(水) 09:00 〜 10:30 201B (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:徂徠 正夫(国立研究開発法人産業技術総合研究所地圏資源環境研究部門)、薛 自求(公益財団法人 地球環境産業技術研究機構)、愛知 正温(東京大学大学院新領域創成科学研究科)、今野 義浩(The University of Tokyo, Japan)、座長:愛知 正温(東京大学大学院新領域創成科学研究科)

09:45 〜 10:00

[HSC04-04] CCSを想定したCO2ハイドレートの生成挙動に及ぼす堆積物粒子径の影響

*新井 佑奈1、三輪 春貴1今野 義浩1,2、神 裕介3鳥羽瀬 孝臣4 (1.東京大学工学部システム創成学科、2.東京大学大学院新領域創成科学研究科、3.産業技術総合研究所、4.電源開発株式会社)


キーワード:CCS、CO2ハイドレート、自己遮蔽、砂粒子径、コア実験

気候変動対策として、CCS(Carbon dioxide Capture and Storage)は有効な手段と考えられているが、日本では遮蔽層を持つ構造性の貯留層(帯水層貯留)だけで十分な貯留容量を確保できるかが不透明である。そこで、帯水層貯留を補完する新たな貯留方法として、海底下に圧入したCO2がハイドレートとなり遮蔽層の役割を果たす、ハイドレートCCSの可能性が検討されている。これまでのハイドレートCCSの研究では、貯留層を模した珪砂からなるコアにCO2を圧入し、ハイドレートの生成挙動を観察するものが多かった。これらの研究は1種類の珪砂のみを用いた理想的な条件であり、またコアの長さも5~15 cm程度と短く、1次元的な解析が行われているのみであった。そこで本研究では、粒径分布をより実海域の貯留層に近づけ、さらにコア長を75 cm まで長尺化することで、3次元的なハイドレート生成挙動と自己遮蔽の発現について実験的に解析を行った。
7.5 MPa、8.5 ℃の条件下で、液体CO2をコア下端から圧入し、コア内各地点の温度と圧力を計測した。模擬堆積物には、豊浦標準砂と東北珪砂8号の混合砂を使用し、豊浦標準砂のみを用いた実験と比較した。実験の結果、標準砂の場合は流体浸透の停止が確認できたのに対し、混合砂ではCO2がコア下流に到達し、流体浸透の停止が確認できなかった。また、混合砂では、コア断面においてハイドレートの生成位置が不均一であった。これらの結果は、粒径分布が広い混合砂ではCO2の流路径の分布も広く、CO2はより太い流路を選択するためハイドレートの生成位置が不均一になり、コア内部でハイドレートの生成していない部分から流体が浸透したためと考えられる。以上から、実海域の貯留層においてハイドレートCCSを実現するためには、CO2の繰り返し圧入を行い、ハイドレートの生成範囲を広げ、漏洩を防ぐ強固な遮蔽層を形成することが必要と考えられる。